2023-06-15 東北大学
〇大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野 准教授 今井淳太
【発表のポイント】
- 調べたい細胞が体内で増殖していることを注1、生きたまま少量の採血で高感度に観察することができるマウスの開発に成功しました。
- このマウスを用いて、肝臓の細胞や膵臓のインスリン産生細胞の増殖を経時的に観察することに成功しました。
- この方法により、実験資源を有効に活用しながら、インスリン産生細胞を増やす糖尿病の再生治療やがん細胞の増殖を抑える薬剤など、様々な疾患の治療法の開発が進むことが期待されます。
【概要】
これまで、生きた動物の体内で細胞が増殖しているかを経時的に観察するためには、複数の時点で動物の臓器を採取して解析する方法しかありませんでした。この方法は動物を含む多くの実験資源を必要とします。
東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野および東北大学病院糖尿病代謝・内分泌内科の今井淳太准教授、菅原裕人助教、片桐秀樹教授らのグループは、調べたい細胞が体内で増殖していることを、生きたままごく少量の採血で経時的かつ高感度に観察できるマウスの開発に成功しました。この方法を用いて、肝臓の細胞増殖に加え、より数が少ない膵臓β細胞注2の増殖を、同じマウスで、生きたまま、継続して観察することに成功しました。さらにこのマウスの細胞は、細胞を増やす薬剤の探索に応用できる可能性があることもわかりました。
これらの方法を用いることで、実験資源を有効に活用しながら、インスリン産生細胞を増やす糖尿病の根治薬や、がん細胞の増殖を抑える薬剤など、多くの疾患の治療法の開発が進むことが大いに期待されます。
本研究成果は、2023年6月14日午前10時(現地時間、日本時間6月14日午後6時)Nature Communications誌に掲載されました。
図1 血中に分泌されたルシフェラーゼの量を測定して特定の細胞の増殖を検出可能なマウスの作製に成功
【用語解説】
注1.細胞の増殖:一つの細胞が二つに分裂することによって細胞が増えること。臓器の働きや大きさを正常に維持する上で極めて重要な仕組み。また、癌細胞の増殖は癌が大きくなる原因として知られる。
注2. β細胞:血糖値を下げるホルモンであるインスリンを作る体内唯一の細胞。ランゲルハンス島といわれる膵臓の中にある多くの島状の部位に集まって存在する。このβ細胞の働きが悪くなったり、数が減ったりすることで、糖尿病が発症することが知られている。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
糖尿病代謝内科学分野
准教授 今井 淳太(いまい じゅんた)
(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室