2024-02-16 京都大学
高山和雄 iPS細胞研究所講師、出口清香 同博士課程学生、橋口隆生 医生物学研究所教授、矢島久乃 同修士課程学生、福原崇介 北海道大学教授らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、2022年10月ごろに出現したオミクロンXBB.1.5のウイルス学的特性を明らかにしました。
XBB.1.5は、それ以前に流行していたXBB.1と比較して、スパイクタンパク質とORF8タンパク質にアミノ酸の点変異を持つことが分かっていました。しかし、なぜ二つのアミノ酸の違いで、XBB.1.5が流行するに至ったのかは不明でした。本研究では、このXBB.1.5について系統進化、スパイクタンパク質の構造およびウイルス学的解析を行うことで、多角的にその特性を解析しました。
まず、オミクロンの系統進化学的解析を行ったところ、XBB.1.5で認めた二つの変異はORF8、スパイクの順に出現したことが分かりました。次に、直接の祖先であるXBB.1とXBB.1.5を用いて中和試験を実施したところ、同等の中和感受性を示すことが分かりました。クライオ電子顕微鏡を用いた解析ではXBB.1とXBB.1.5のスパイクタンパク質と新型コロナウイルスの感染受容体であるACE2との相互作用の違いは認めませんでした。さらに、合胞体形成活性、培養細胞およびオルガノイドでの増殖能もXBB.1とXBB.1.5との間で有意な差を認めませんでした。一方で、ハムスターモデルにおけるXBB.1.5の病原性はXBB.1よりも低いことが明らかとなりました。そこで、ウイルスの弱毒化のメカニズムを明らかにするために、オルガノイドにおけるMHCクラスI分子の発現を調べました。その結果、XBB.1.5はXBB.1と比較して、発現の低下が抑えられていないことが分かりました。それぞれの点変異を持つ組換えウイルスを作出し、病原性試験を行ったところ、ORF8の機能欠損による免疫抑制機構の低下がXBB.1.5の病原性に関与することが明らかになりました。
本研究成果は、2024年2月8日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
XBB.1. 5の多角的なウイルス性状解析
詳しい研究内容について
オミクロンXBB.1.5のウイルス学的特性の解明~新型コロナウイルスの生態の全容解明に貢献すると期待~
研究者情報
研究者名:高山 和雄
研究者名:出口 清香
研究者名:橋口 隆生