2018/09/10 京都大学
今井啓雄 霊長類研究所教授、西栄美子 同博士課程学生(現・テクノプロ・R&D研究員)、橋戸南美 同研究員(現・中部大学・日本学術振興会特別研究員)、早川卓志 同特任助教、辻大和 同助教らの研究グループは、コロブス類の霊長類の甘味感覚が、苦味感覚と同様に鈍っていることを見出しました。
本研究成果は、2018年9月7日に、国際学術誌「Primates」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
ヒトの味覚についても経験に基づいた研究が多く、分子や細胞レベルの科学的知見に基づいた研究が必要とされています。ヒトと近縁な霊長類の味覚や消化システムを理解することにより、安全安心な食品の開発にも生かされることが期待されます。
概要
ヒトを含めた霊長類の中でも、コロブス類のサルは葉や未熟な果実を主に食べて、ヒトにはおいしく思える甘く熟した果実はあまり食べません。本研究グループは、コロブス類の霊長類の甘味感覚について調べました。
まず、舌で糖類を感じる甘味受容体について、コロブス類の遺伝子をもとに受容体をシャーレ上で再構成して糖類に対する反応を見ましたが、反応はありませんでした。次に、日本モンキーセンターで飼育されているコロブス類が糖類を含む甘い食べ物を好むかどうか観察したところ、ニホンザルが好む甘い食べ物は、コロブス類は好みませんでした。
本研究成果は、本研究グループが以前に報告した「苦味感覚の減少」とあわせて、コロブス類の味覚そのものが鈍っていることを示しており、甘い果実などを好む他の霊長類に比べ、コロブス類は特殊な味覚や食嗜好、消化システムを持っていると考えられます。また、食嗜好を分子・細胞レベルで解明することで、コロブス類のような特殊な食性を持つ動物の効率的な保全につながることが期待されます。
図:インドネシアのパンガンダラン自然保護区で葉を食べるコロブス類の一種、ジャワルトン(写真撮影:辻大和)
詳しい研究内容について
書誌情報
- 京都新聞(9月8日 28面)および産経新聞(9月8日 25面)に掲載されました。