デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-050/NCNP-03)の米国における希少小児疾患指定のお知らせ

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2024-09-06 国立精神・神経医療研究センター

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市、理事長:中込 和幸、以下、NCNP)は、日本新薬株式会社(本社:京都市南区、代表取締役社長:中井 亨、以下、日本新薬)と共同で開発を進めているアンチセンス核酸医薬品であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)治療薬(NS-050/NCNP-03)について、米国食品医薬品局(FDA)から、希少小児疾患指定を受けましたのでお知らせいたします。
希少小児疾患指定は、米国で18歳までに発症し、患者数が20万人未満の重篤又は生命を脅かす疾患がその対象となります。
DMDは、筋肉細胞を支えるジストロフィンタンパク質の欠損が原因で、骨格筋、心筋、肺の筋力低下を引き起こす進行性の筋ジストロフィーです。DMDにはさまざまな遺伝子変異型があり、NS-050 /NCNP-03の投与対象となるのは、エクソン50スキッピングにより治療可能な遺伝子変異が確認されたDMD患者さんです。
NS-050/NCNP-03の開発は、本邦においては、日本新薬が日米第Ⅰ/Ⅱ相試験の実施に向けて準備を進めています。
NCNPは難病・希少疾患治療剤の開発に引き続き使命感を持って取り組んで参ります。

開発の背景

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子の変異が原因で、筋の細胞膜からジストロフィンタンパク質が失われ、徐々に筋力低下が進む難病で、男児に発症します。「エクソン・スキップ治療」は、アンチセンス核酸と呼ばれる短いDNAの様な合成核酸を用いて、メッセンジャーRNA前駆体から成熟メッセンジャーRNAが作られる過程で、タンパク質に翻訳されるエクソン領域の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する治療法です(イン・フレーム化といいます)。この結果、正常なジストロフィンに比べると、タンパク質の一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンが発現して筋機能の改善が期待できます。この治療でスキップの対象となるエクソンは患者の変異形式に応じて異なり、現在までに、本邦では、NCNPと日本新薬が共同で見出したNS-065/NCNP-01を有効成分としたエクソン53スキップ薬であるビルテプソ®点滴静注250mgが製造販売承認を取得しておりますが、エクソン53スキップ薬が適応にならない患者に対して、別のエクソンを標的とした薬剤の開発が喫緊の課題となっております。
現在、NCNPはエクソン44スキッピングによるNS-089/NCNP-02を2番目の開発品目として、エクソン50スキッピングによるNS-050/NCNP-03を3番目の開発品目として、エクソン51スキッピングによるNS-051/NCNP-04を4番目の開発品目として、日本新薬と共同で開発を進めています。

用語の説明

<デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)>
DMDは、男児に発症する、もっとも頻度の高い遺伝性筋疾患で、ジストロフィンと呼ばれる筋肉の細胞の骨組みを作るタンパク質(ジストロフィンタンパク質)の遺伝子に変異が起こることで、正常なタンパク質が作れなくなり、筋力が低下してやがて死に至る重篤な疾患です。現在、その進行を遅らせる目的でステロイド剤による治療が行なわれていますが、それ以外に有力な治療法は存在せず、新たな治療法の開発が必要とされています。
<エクソン・スキップ治療>
アンチセンス核酸と呼ばれる短い合成核酸(DNAの様なもの)を用いて、遺伝子の転写産物(メッセンジャーRNA)のうち、タンパク質に翻訳される領域(エクソン)の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正(これをイン・フレーム化といいます)する治療法です。正常なジストロフィンタンパク質に比べると、その一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンタンパク質が発現し、筋機能の改善が期待できます。この治療の対象となるエクソンは、患者の変異形式に応じて異なり、NS-050/NCNP-03はエクソン50を対象としています。

関連リンク

プレスリリース(2023/06/16)デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-050/NCNP-03)の米国での第Ⅰ/Ⅱ相試験治験計画合意に関するお知らせ
https://www.ncnp.go.jp/topics/2023/20230616p.html

お問い合わせ

■お問い合わせ先
≪研究に関すること≫
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 遺伝子疾患治療研究部 部長
青木 吉嗣(あおき よしつぐ)

≪報道に関すること≫
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
総務課広報室

有機化学・薬学
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