芋虫がアリの攻撃を避ける連続曲芸技を発見~飼育容器内で観察してもわからない現象の例~

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2024-10-18 京都大学

動物を飼うことは、彼らが脱出する自由を奪うことと同じです。飼育する動物を観察すると、本来なら脱出してそこにいない動物の不自然な行動を観察している恐れがあります。農業害虫のコナガの幼虫は、アリなどに攻撃されるとエビのように素早く飛び退くことが知られます。コナガの幼虫とアリを飼育容器の底面で観察すると、幼虫は飛び退いて何度かアリの攻撃をかわしますが、いずれ必ず捕まるので無駄な抵抗に見えます。

伊藤和也 農学研究科修士課程学生(現:住友化学株式会社研究員)と矢野修一 同助教は、この回避術が餌植物上では大いに役立つことを発見しました。幼虫は居場所に応じて回避術を使い分け、葉の表でアリに会うと飛び退いた後に葉の端から糸でぶら下がり、葉の裏でアリに会うとその場でぶら下がりました。アリはぶら下がった幼虫を追撃できません。コナガの幼虫がアリの攻撃を避ける華麗な連続技をもつことは、彼らが今日までアリとの厳しい攻防を生き延びてきたことを物語ります。

本研究成果は、2024年10月16日に、国際学術誌「Annals of the Entomological Society of America」にオンライン掲載されました。

芋虫がアリの攻撃を避ける連続曲芸技を発見~飼育容器内で観察してもわからない現象の例~
コナガの幼虫は居場所によってアリを回避するアクロバティックな連続技を使い分ける

研究者のコメント

「本研究は、第一著者の伊藤君が観察を通じて発見し、実験により検証した内容です。大学院生までが受動的な座学に長時間を費やす昨今ですが、まだ誰も発見していない事実を先生が講義で教えてくれるはずがありませんし、そんな事実が教科書に書いてあるはずもありません。生物学では、自然選択が創り出した身近な自然こそが新しい発見をするための最良の教科書です。座学はほどほどに。」(矢野修一)

詳しい研究内容について

芋虫がアリの攻撃を避ける連続曲芸技を発見―飼育容器内で観察してもわからない現象の例―

研究者情報

研究者名:矢野 修一

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1093/aesa/saae031

【書誌情報】
Kazuya Ito, Shuichi Yano (2024). Rapid evasive behaviors of diamondback moth larvae against ants. Annals of the Entomological Society of America.

生物環境工学
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