珪藻の強光に対する防御策:集光性色素タンパク質の分子調節機構の解明

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2020-12-07 岡山大学,神戸大学,理化学研究所

◆発表のポイント

  • 集光性色素タンパク質は、光合成に必要な光エネルギーを集め光化学系に供給する重要な役割を持つ一方で、過剰な光エネルギーを光合成には使わずに熱として散逸する役割(消光)を有します。
  • 強光にさらされた珪藻Phaeodactylum tricornutumからFCPを調製し、生化学および分光学分析を行った結果、FCPのタンパク質および色素組成が大きく変わることを見出しました。さらに、色素間の励起エネルギー伝達機構も大幅に変化し、エネルギー消光が誘導されやすくなりました。
  • 珪藻FCPの分子調節機構は、強光に対する防御策として機能することを示唆しました。

図. 珪藻Phaeodactylumの強光におけるFCPの分子構造および機能の変化

岡山大学異分野基礎科学研究所の長尾遼特任講師と神戸大学大学院理学研究科の秋本誠志准教授の共同研究グループは、理化学研究所環境資源科学研究センターの堂前直ユニットリーダーらと共に、強光下における珪藻Phaeodactylum tricornutumの集光性色素タンパク質FCPの発現および時間分解蛍光分光法を用いた励起エネルギー伝達機構の解析に成功しました。この結果から、Phaeodactylumは強光によりFCPの分子構造および励起エネルギー伝達経路の調節を行い、エネルギー消光を誘導することが明らかになりました。本研究成果は12月4日、欧州の科学雑誌「Biochimica et Biophysica Acta – Bioenergetics」にオンラインで掲載されました。
本研究成果は、「珪藻は強光ストレスを受けた際、どのようにして集光性色素タンパク質FCPを調節し、機能させるのか?」、という問いに対して知見を与えるものです。この光応答メカニズムは珪藻にとって重要な生存戦略の一環であるかもしれません。

◆研究者からのひとこと

光合成生物は太陽光が必須であるにもかかわらず、過剰に光が供給されると死んでしまいます。変動する光環境の中で充分量の光エネルギーをどのようにして獲得するのか?これは光合成生物にとっての至上命題とも言えます。今回の研究成果でその一端を捉えることができました。(長尾特任講師)

■論文情報
論 文 名:“Enhancement of excitation-energy quenching in fucoxanthin chlorophyll a/c-binding proteins isolated from a diatom Phaeodactylum tricornutum upon excess-light illumination”
「強光によって誘導される珪藻Phaeodactylum FCPの消光機構」
掲 載 紙:Biochimica et Biophysica Acta – Bioenergetics
著  者:Ryo Nagao, Makio Yokono, Yoshifumi Ueno, Takehiro Suzuki, Minoru Kumazawa, Ka-Ho Kato, Naoki Tsuboshita, Naoshi Dohmae, Kentaro Ifuku, Jian-Ren Shen, and Seiji AkimotoD O I:https://doi.org/10.1016/j.bbabio.2020.148350
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0005272820302000

詳しい資料は≫

<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
特任講師 長尾 遼 (ながお りょう)

神戸大学大学院理学研究科
准教授 秋本 誠志 (あきもと せいじ)

生物化学工学
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