2020-12-14 京都大学
大門高明 農学研究科教授らの研究グループは、カイコの眠性(みんせい)変異体の解析から、カイコの脱皮の回数が決まるしくみを明らかにしました。
カイコの幼虫は通常、4回の脱皮(=養蚕学用語で「眠」)を経て5齢幼虫となった後に、蛹へと変態します。しかし、カイコには幼虫の脱皮回数が3回に減ってしまう系統や、逆に5回に増えてしまう系統が存在しています。脱皮の回数は「眠性」と呼ばれる1つの遺伝子座によってもたらされますが、その詳しいしくみは100年以上も未解明のままでした。本研究では、眠性遺伝子が生物のかたちをつくるHox遺伝子であること、そしてこの遺伝子は脱皮を引き起こすホルモンの生合成を調節することでカイコの脱皮回数を決定することを明らかにしました。
Hox遺伝子は動物の体制(ボディプラン)を決定する遺伝子として良く知られています。しかし本研究は、Hox遺伝子が動物の生理学的な形質も制御することを示した画期的な成果となります。また、本研究の成果は昆虫の脱皮回数をターゲットとした昆虫の形質デザインや、あらたな害虫防除技術の開発へとつながるものと期待されます。
本研究成果は、2020年12月12日に、国際学術誌「Current Biology」のオンライン版に掲載されました。
図:カイコの脱皮回数が決まるしくみ
研究者情報
研究者名:大門高明