2022-02

医療・健康

一人の時間を楽しむ高齢者は幸福感が高いのか~孤独を好む志向性と主観的幸福感の関連~

高齢者を対象として、孤独を好む傾向が孤独感や主観的幸福感とどのように関係するかを検証するため調査を実施しました。WEB調査と郵送調査を行い、「孤独を楽しむ」傾向がある人はそうでない人と比べ、ネガティブな感情を経験しにくいことが明らかとなりました。また、効果は弱いながらも、「孤独の生産性を評価する」傾向がある人は、ポジティブな感情を経験しやすく、人生満足度が高いことが示されました。一方で、孤独を好む志向性は孤独感の高さとも関連するため、孤独感が高まる場合、その効果は部分的であることがわかりました。
医療・健康

自閉スペクトラム症には脳内のドーパミンD2/3受容体の減少が関連し、社会的コミュニケ―ションの困難さや脳部位間の機能的な結びつきに関与していることが明らかに

自閉スペクトラム症(ASD)と診断される方の多くに、脳内でドーパミンD2/3受容体の減少を認めました。この減少は、ASDの中核症状である社会的コミュニケーションの困難さや、ASDに特徴的とされる脳部位間の機能的な結びつきに関与することを見出しました。脳内ドーパミンD2/3受容体の減少は、ASDの「社会的動機付け仮説」を裏付けるものであり、新たな治療薬開発の標的となりうることを支持する研究成果です。
細胞遺伝子工学

ヒト脳オルガノイドがもちうる意識の問題を検討し、研究上の倫理的枠組みを提案

ヒト脳オルガノイドとは、多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)から分化誘導された、生体と類似の構造を持つ三次元脳組織のことである。本研究では、「ヒト脳オルガノイドが意識をもつにもかかわらず、意識はないとみなし、モノとして扱うことによって生じうる被害をできるだけ避けるべき」という予防原則を採用する。説得力のある意識理論のうちの一つでもヒト脳オルガノイドに意識を認めるなら、脳オルガノイドは意識をもつと仮定して研究を進めるべきである。ヒト脳オルガノイドがどのような種類の意識経験をもちうるか、その発達度合いなどから推測する方法論を提示する。
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医療・健康

診断難易度が高い通常型間質性肺炎を高精度に診断する人工知能モデルの開発に世界で初めて成功

人工知能による効率的な特徴抽出技術とエキスパート(高い専門性を有する医師など)の知識を融合させることで、通常型間質性肺炎の診断における判断根拠の透明性を保持したまま高い診断精度を保持する人工知能モデルを作成するための新手法を開発しました。従
有機化学・薬学

アミロイドの脱凝集メカニズムを解明~アミロイド構造に依存した脱凝集機構が明らかに~

全反射照明蛍光顕微鏡を用いて、酵母のSup35プリオンタンパク質のアミロイド(Sc4アミロイド)に蛍光ラベルしたシャペロンタンパク質を加え、Sc4アミロイドが脱凝集する過程を調べました。脱凝集にはHsp104、Ssa1、Sis1の三つのシャペロンタンパク質が必要であることが分かりました。アミロイドにはSsa1とSis1が先に結合し、そこにHsp104が結合・解離を繰り返すことで、アミロイドが分断されることが分かりました。別の構造を持つSup35のSc37アミロイドでは、アミロイドが一様に脱凝集(溶解)されたため、脱凝集の様式が分断とは異なることも明らかになりました。
細胞遺伝子工学

制御性T細胞の新しいマーカーを発見~T細胞受容体の配列パターンがT細胞の運命に影響する~

ヒトのヘルパーT細胞のT細胞受容体配列のビックデータを解析し、制御性T細胞のT細胞受容体の配列を詳しく調べました。独自の解析アルゴリズムを考案し、制御性T細胞を特徴付けるT細胞受容体の配列パターンを発見しました。さらに、その配列パターンを基にした「TiRPスコア」を作成し、T細胞受容体の配列情報だけを用いて制御性T細胞に分化する確率を推定することに成功しました。
細胞遺伝子工学

iPSコホートと機械学習を用いたアルツハイマー病再構成~CDiPテクノロジーによる無病社会に向けた孤発性高齢疾患の解読~

孤発性アルツハイマー病(AD)の患者102人から樹立したiPSコホートを用いて、複雑な孤発性ADの病態を細胞種および病態ごとの表現型(病的形質)に分解し、その背景の遺伝子データからADの臨床リアルワールドデータを再構成する「CDiPテクノロジー」を開発しました。iPSコホートを用いることで、iPS細胞から分化誘導される細胞の種類とAD病態の表現型(病的形質)の組み合わせに特異的な背景の遺伝子のデータを探索することができるシステムとしてcell GWASという概念を構築し実施しました。
医療・健康

世界初、悪性骨腫瘍に対する承認(実用化)を目指した、腫瘍溶解性ウイルスの第Ⅱ相医師主導治験(多施設共同)を開始

独自開発した腫瘍溶解性アデノウイルスのSurv.m-CRA-1(サバイビン反応性・多因子増殖制御型アデノウイルス)の第Ⅰ相試験を実施・完了し、安全性と治療効果の両面で良好な結果を得ました。この成果を踏まえ、世界初の悪性骨腫瘍への承認(実用化)を目指した多施設共同(鹿児島大学、国立がん研究センター中央病院、久留米大学)の第Ⅱ相試験を開始します。
細胞遺伝子工学

外部から遺伝物質を持ち込まずにゲノムを改良する新技術「TAQing2.0」を開発

外部から遺伝物質を持ち込まずに生物のゲノムDNAを大規模に再編成し、生物機能の改良を加速する新技術「TAQing2.0」の開発に成功しました。細胞膜貫通ペプチドを用いてDNA切断活性をもつタンパク質を細胞内に導入し、大規模かつランダムにゲノム全体を再編成させることができます。生物の交配(有性生殖)が不能で通常の交配による育種が不可能な産業用微生物において、形質の効率的な改良が可能になりました。
医療・健康

光で狙った細胞を死滅させる新技術の開発 ~副作用のない光がん治療法に向けて~

細胞をアルカリ化する光感受性たんぱく質を用いることで、光で狙った細胞を選択的に死滅させる新技術の開発に成功しました。
医療・健康

不妊症から癌まで様々な婦人科疾患に対する画期的な予防法開発につながる内膜ゲノム異常の新知見

月経によって剥離再生を繰り返す子宮内膜で癌関連遺伝子変異が維持されるメカニズムを解明するため、ヒト正常子宮内膜腺管の大規模なゲノム解析と3次元構造解析を統合した新しい手法の解析を行いました。月経時に剥がれない子宮内膜基底層の内膜腺管の地下茎構造内に癌関連遺伝子変異が蓄積し、地下茎を介して子宮内で領域を広げていくことを明らかにしました。
生物環境工学

海から遡上する小型エビ類が川の生態系を大きく変える~海と川のつながりが担う役割~

小型エビ類がいる河川といない河川で実際の生態系を比較し、一つの河川の中で小型エビ類がいる部分といない部分を実験的に作り出して他の生物の応答を調べました。エビがいると川底の生物相が変わり、川底を覆う細かな有機物が減少し、栄養塩動態も変化し、河川水中の栄養塩濃度にまで影響が及ぶ可能性が示唆されました。
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