2023-11-08 国立がん研究センター,愛知県がんセンター,理化学研究所,東京大学医科学研究所,滋賀医科大学,東京医科歯科大学,日本赤十字社医療センター,神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター,秋田大学,佐賀大学,東海国立大学機構名古屋大学,信州大学,福島県立医科大学,群馬大学,京都大学,東北大学,岡山大学,株式会社スタージェン
発表のポイント
- 日本人の肺腺がん患者さん約1万7千例の遺伝子を調べ、肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差を明らかにしました。
- これらの遺伝子の個人差は、非喫煙者に発生しやすく、がん細胞の増殖に必要な信号を細胞内に伝える役割を担っているEGFR遺伝子に変異のある肺腺がんのかかりやすさに強くかかわっていました。
- 遺伝子の個人差の一部は、染色体DNAの末端に存在するテロメア配列を長くすることで、肺腺がんへのかかりやすさを高めることが示唆されました。
- これらの発見は、非喫煙者に対する肺腺がんの予防、早期発見に役立つと期待されます。
概要
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)研究所ゲノム生物学研究分野 白石航也ユニット長、河野隆志分野長、愛知県がんセンター(総長:丹羽康正、愛知県名古屋市)がん予防研究分野 松尾恵太郎分野長など、全国19施設からなる共同研究グループは、日本人の肺腺がんの患者さん約1万7千例と肺がんに罹患していない人約15万例の遺伝子の個人差を調べました。その結果、日本人における肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差が19個同定され、その一部は、非喫煙者に多く発生するEGFR遺伝子(注1)に変異を持つ肺腺がんのかかりやすさと強く関わることが分かりました。一部の遺伝子の個人差は、染色体DNAの末端に存在しゲノムの安定化に関わるテロメア配列(注2)を長くすることで、肺腺がんへのかかりやすさを高めることが示されました。これらの結果は、非喫煙者の肺腺がんの予防、早期発見に役立つと期待されます。
本研究成果は、2023年10月26日(米国東部時間)付で、国際学術誌「Cancer Communications」に掲載されました。
背景
肺がんはがん死因の一位であり、日本では年間に約7万6千人、全世界では約180万人の死をもたらしています(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)、世界保健機関, Fact Sheets, Cancer)。肺がんの中でも最も発症頻度が高く、増加傾向にあるのが肺腺がんです。肺腺がんは、肺がんの危険因子である喫煙との関連が比較的弱く(相対危険度は約2倍)、約半数は非喫煙者での発症です(参考論文†1)。喫煙以外の危険因子が特定されていないことから、罹患危険群の把握や発症予防は容易ではありません。特に、日本を含めたアジアの国では、EGFRという遺伝子の変異を原因として発生する肺腺がんが多いことが知られています。
本研究では、日本人の肺腺がんの患者さん約1万7千例と肺がんに罹患していない人約15万例の遺伝子の個人差を比較することにより、肺腺がんへのかかりやすさを決めるゲノム全体にわたる遺伝子の個人差(遺伝子多型:注3)を探し、EGFR遺伝子の変異を持つ肺腺がんへのかかりやすさや遺伝子の個人差がもたらす生物学的な影響を調べました。
研究方法
全国19施設からなる共同研究グループは、日本人の肺腺がん患者さん約1万7千例と肺がんに罹患していない人約15万例について遺伝子多型を比較し、肺腺がんの患者さんが優先的に持つ遺伝子の個人差を同定しました。肺腺がん患者さん964例の末梢血DNAの全ゲノムシークエンス解析を行い、遺伝子の個人差とテロメア配列の長さとの関係を調べました。
研究結果
1.日本人における肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差を同定
19個の遺伝子の個人差が日本人の肺腺がんへのかかりやすさと関係することが分かりました。これらの遺伝子の個人差は、染色体DNAの末端に存在しゲノムの安定化に関わるテロメア配列の長さを調節するTERT, TERC, POT1遺伝子や我々の体から異物を排除する免疫をつかさどるHLAクラスI/II遺伝子(注4)に存在していました (表1) 。
表1.日本人の肺腺がんへのかかりやすさに関わる遺伝子の個人差
遺伝子(計19個) | 機能 | 危険型多型の影響 |
TERT (2多型), TERC, POT1 | テロメア長の制御 | テロメアを長くする |
BTN2A1, HLA-C, BTNL2, HLA-DQB1, HLA-DPB1, BAK1 | 免疫の制御
(HLA-クラスI/II遺伝子) |
免疫応答の違い |
TP63, PTPRG, FOXP4, ROS1, ASB15, MTAP, VTI1A, SECISBP2L, BPTF | その他の機能 |
2.EGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差を同定
19個の遺伝子の個人差について、EGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんと持たない肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差の強さを比較しました。その結果、HLAクラスII遺伝子の4つの個人差とTERT遺伝子の個人差が、EGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんにより強く関わることが明らかになりました(図1)。
例えば、TERT遺伝子の肺腺がんのかかりやすさを決める遺伝子の個人差をひとつ持つ人は、持たない人と比べて1.43倍EGFR遺伝子の変異を持つ肺腺がんへのかかりやすさが高まり、ふたつ持つ人は持たない人と比べて2.04(1.43×1.43)倍高まります。一方、EGFR遺伝子変異陰性の肺腺がんの場合は、それぞれ1.25倍、1.56倍となります。
図1. TERTやHLAクラスII遺伝子の多型はEGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんのかかりやすさと強く関係する
肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差をひとつ持つときの相対危険度をオッズ比で示す。EGFR遺伝子に変異を持つ肺腺がんと持たない肺腺がんのオッズ比の差を検定したP値を合わせて示す。
3.肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差はテロメア配列の長さに影響する
テロメア配列の長さを調節するTERT, TERC, POT1遺伝子(表1)の個人差とその人の持つテロメアの長さとの関係を調べました。その結果、肺腺がんへのかかりやすさを決める遺伝子の個人差を持つ人は持たない人に比べてテロメアが長い傾向にあることが分かりました。テロメアの長さは細胞の寿命やゲノムの安定性と関係することが知られています。今回同定されたTERT, TERC, POT1遺伝子の個人差を持つ方は、より長いテロメア配列を持つことで肺の細胞ががん化する可能性を示唆しています(図2)。
図2 遺伝子の個人差とテロメア長との関連
テロメアの長さを制御するTERC, TERT, POT1遺伝子の肺腺がんへのかかりやすさを決める個人差の保有数とテロメアの長さとの関係を示す。保有数の増加に伴うテロメア長の伸長の検定のP値を合わせて示す。
展望
大規模なゲノム解析を行うことで日本人やアジア人に特有の肺腺がんへのかかりやすさのメカニズムが分かってきました。今回の研究成果を基に、非喫煙者の肺腺がんの予防や早期発見の手掛かりとなることが期待されます。
本研究グループが2012年より開始したゲノム解析により、5個の肺腺がんのかかりやすさに関わる遺伝子の個人差を同定し†2、2016年には6個†3今年に入り19~29個†4を同定してきました。今回の研究に試料提供を頂きました肺がん患者さんや非がん協力者の方に深く感謝いたします。今後は国際コンソーシアムとの連携を通じて人種横断的なゲノム解析に参画し、人種による差についての検討も行う予定です。
研究支援
本研究は、文部科学省科学研究費助成事業 学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」コホート・生体試料支援プラットフォーム(16H06277, 22H04923)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業(JP15ck0106096)・オーダーメイド医療実現化プロジェクト(バイオバンク・ジャパン)、国立がん研究センターバイオバンク、多目的コホート研究(JPHC研究:国立がん研究センター研究開発費23-A-31[特], 26-A-2, 29-A-4, and 2020-J-4)、文部科学省科学研究費助成事業 学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」コホート・生体試料支援プラットフォーム(16H06277, 22H04923)などの支援を受け行われました。また内閣府主導官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM) 「創薬ターゲット探索プラットフォームの構築」において、AI研究開発を志向した世界最大規模の肺がん統合データベースの構築や、創薬標的探索用のAI解析プラットフォームの開発の一環として研究支援を受け行われました。
論文情報
雑誌名
Cancer Communications (オンライン版)
タイトル
Identification of telomere maintenance gene variations related to lung adenocarcinoma risk by genome-wide association and whole genome sequencing analyses
著者
Kouya Shiraishi*, Atsushi Takahashi, Yukihide Momozawa, Yataro Daigo, Syuzo Kaneko, Takahisa Kawaguchi, Hideo Kunitoh, Shingo Matsumoto, Hidehito Horinouchi, Akiteru Goto, Takayuki Honda, Kimihiro Shimizu, Masahiro Torasawa, Daisuke Takayanagi, Motonobu Saito, Akira Saito, Yuichiro Ohe, Shun-ichi Watanabe, Koichi Goto, Masahiro Tsuboi, Katsuya Tsuchihara, Sadaaki Takata, Tomomi Aoi, Atsushi Takano, Masashi Kobayashi, Yohei Miyagi, Kazumi Tanaka, Hiroyuki Suzuki, Daichi Maeda, Takumi Yamaura, Maiko Matsuda, Yoko Shimada, Takaaki Mizuno, Hiromi Sakamoto, Teruhiko Yoshida, Yasushi Goto, Tatsuya Yoshida, Taiki Yamaji, Makoto Sonobe, Shinichi Toyooka, Kazue Yoneda, Katsuhiro Masago, Fumihiro Tanaka, Megumi Hara, Nobuo Fuse, Satoshi S. Nishizuka, Noriko Motoi, Norie Sawada, Yuichiro Nishida, Kazuki Kumada, Kenji Takeuchi, Kozo Tanno, Yasushi Yatabe, Kuniko Sunami, Tomoyuki Hishida, Yasunari Miyazaki, Hidemi Ito, Mitsuhiro Amemiya, Hirohiko Totsuka, Haruhiko Nakayama, Tomoyuki Yokose, Kazuyoshi Ishigaki, Toshiteru Nagashima, Yoichi Ohtaki, Kazuhiro Imai, Ken Takasawa, Yoshihiro Minamiya, Kazuma Kobayashi, Kenichi Okubo, Kenji Wakai, Atsushi Shimizu, Masayuki Yamamoto, Motoki Iwasaki, Koichi Matsuda, Johji Inazawa, Yuichi Shiraishi, Hiroyoshi Nishikawa, Yoshinori Murakami, Michiaki Kubo, Fumihiko Matsuda*, Yoichiro Kamatani*, Ryuji Hamamoto*, Keitaro Matsuo*, Takashi Kohno*
(*co-corresponding authors)
DOI
10.1002/cac2.12498.
掲載日
2023年10月26日(米国東部時間)
URL
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cac2.12498
発表者
国立研究開発法人国立がん研究センター
白石 航也(筆頭著者)、金子 修三、高柳 大輔、虎澤 匡洋、松田 麻衣子、島田 陽子、水野 孝昭、坂本 裕美、吉田 輝彦、後藤 悌、吉田 達哉、元井 紀子(研究当時)、角南 久仁子、菱田 智之(研究当時)、山地 太樹、澤田 典絵、岩崎 基、小林 和馬、高澤 建、渡辺 俊一、松本 慎吾、谷田部 恭、堀之内 秀仁、坪井 正博、土原 一哉、西川 博嘉、浜本 隆二(責任著者)、後藤 功一、大江 裕一郎、河野 隆志(責任著者)
愛知県がんセンター
松尾 恵太郎(責任著者)、真砂 勝泰、伊藤 秀美
国立研究開発法人理化学研究所 生命医科学研究センター
久保 充明(研究当時)、桃沢 幸秀、髙田 定暁(研究当時)、碧井 智美、石垣 和慶、鎌谷 洋一郎(責任著者)、高橋 篤
国立大学法人東京大学 医科学研究所
醍醐 弥太郎、高野 淳、松田 浩一、村上 善則
国立大学法人滋賀医科大学
醍醐 弥太郎
国立大学法人京都大学
川口 喬久、園部 誠、松田 文彦(責任著者)
国立大学法人東京医科歯科大学
小林 正嗣(研究当時)、大久保 憲一、宮崎 泰成、本多 隆行、稲澤 譲治
日本赤十字社医療センター
國頭 英夫
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター
宮城 洋平、横瀬 智之、中山 治彦
国立大学法人秋田大学
後藤 明輝、前田 大地(研究当時)、今井 一博、南谷 佳弘
国立大学法人佐賀大学
原 めぐみ、西田 裕一郎
国立大学法人東北大学
布施 昇男、熊田 和貴、山本 雅之
岩手医科大学
西塚 哲、丹野 高三、清水 厚志
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学
竹内 研時(研究当時)、若井 建志
国立大学法人信州大学
清水 公裕
公立大学法人福島県立医科大学
鈴木 弘行、山浦 匠、齋藤 元伸
国立大学法人群馬大学
大瀧 容一、永島 宗晃、田中 和美
国立大学法人岡山大学
豊岡 伸一
株式会社スタージェン
斎藤 聡、雨宮 光宏、戸塚 裕彦
参考論文
†1
Sobue T, Suzuki T, Fujimoto I, Matsuda M, Doi O, Mori T, Furuse K, Fukuoka M, Yasumitsu T, Kuwahara O, et al. Case-control study for lung cancer and cigarette smoking in Osaka, Japan: comparison with the results from Western Europe Jpn J Cancer Res. 1994 May;85(5):464-73.
†2
Shiraishi K, Kunitoh H, Daigo Y, Takahashi A, Goto K, Sakamoto H, Ohnami S, Shimada Y, Ashikawa K, Saito A, Watanabe S, Tsuta K, Kamatani N, Yoshida T, Nakamura Y, Yokota J, Kubo M, Kohno T. A genome-wide association study identifies two new susceptibility loci for lung adenocarcinoma in the Japanese population. Nat Genet. 2012 Jul 15;44(8):900-3.
†3
Shiraishi K, Okada Y, Takahashi A, Kamatani Y, Momozawa Y, Ashikawa K, Kunitoh H, Matsumoto S, Takano A, Shimizu K, Goto A, Tsuta K, Watanabe SI, Ohe Y, Watanabe Y, Goto Y, Nokihara H, Furuta K, Yoshida A, Goto K, Hishida T, Tsuboi M, Tsuchihara K, Miyagi Y, Nakayama H, Yokose T, Tanaka K, Nagashima T, Ohtaki Y, Maeda D, Imai K, Minamiya Y, Sakamoto H, Saito A, Shimada Y, Sunami K, Saito M, Inazawa J, Nakamura Y, Yoshida T, Yokota J, Matsuda F, Matsuo K, Daigo Y, Kubo M, Kohno T. Association of variations in HLA class II and other loci with susceptibility to EGFR-mutated lung adenocarcinoma. Nat Commun. 2016 Aug 9;7:12451. doi: 10.1038/ncomms12451.
†4
Shi J, Shiraishi K, Choi J, Matsuo K, Chen TY, Dai J, Hung RJ, Chen K, Shu XO, Kim YT, Landi MT, Lin D, Zheng W, Yin Z, Zhou B, Song B, Wang J, Seow WJ, Song L, Chang IS, Hu W, Chien LH, Cai Q, Hong YC, Kim HN, Wu YL, Wong MP, Richardson BD, Funderburk KM, Li S, Zhang T, Breeze C, Wang Z, Blechter B, Bassig BA, Kim JH, Albanes D, Wong JYY, Shin MH, Chung LP, Yang Y, An SJ, Zheng H, Yatabe Y, Zhang XC, Kim YC, Caporaso NE, Chang J, Ho JCM, Kubo M, Daigo Y, Song M, Momozawa Y, Kamatani Y, Kobayashi M, Okubo K, Honda T, Hosgood DH, Kunitoh H, Patel H, Watanabe SI, Miyagi Y, Nakayama H, Matsumoto S, Horinouchi H, Tsuboi M, Hamamoto R, Goto K, Ohe Y, Takahashi A, Goto A, Minamiya Y, Hara M, Nishida Y, Takeuchi K, Wakai K, Matsuda K, Murakami Y, Shimizu K, Suzuki H, Saito M, Ohtaki Y, Tanaka K, Wu T, Wei F, Dai H, Machiela MJ, Su J, Kim YH, Oh IJ, Lee VHF, Chang GC, Tsai YH, Chen KY, Huang MS, Su WC, Chen YM, Seow A, Park JY, Kweon SS, Chen KC, Gao YT, Qian B, Wu C, Lu D, Liu J, Schwartz AG, Houlston R, Spitz MR, Gorlov IP, Wu X, Yang P, Lam S, Tardon A, Chen C, Bojesen SE, Johansson M, Risch A, Bickeböller H, Ji BT, Wichmann HE, Christiani DC, Rennert G, Arnold S, Brennan P, McKay J, Field JK, Shete SS, Marchand LL, Liu G, Andrew A, Kiemeney AL, Zienolddiny-Narui S, Grankvist K, Johansson M, Cox A, Taylor F, Yuan JM, Lazarus P, Schabath BM, Aldrich CM, Jeon HS, Jiang SS, Sung SJ, Chen CH, Hsiao CF, Jung JY, Guo H, Hu Z, Burdett L, Yeager M, Hutchinson A, Hicks B, Liu J, Zhu B, Berndt IS, Wu W, Wang J, Li Y, Choi EJ, Park HK, Sung WS, Liu L, Kang HC, Wang WC, Xu J, Guan P, Tan W, Yu CJ, Yang G, Sihoe LDA, Chen Y, Choi YY, Kim SJ, Yoon IH, Park KI, Xu P, He Q, Wang CL, Hung HH, Vermeulen HCR, Iona Cheng I, Wu J, Lim WY, Tsai FY, Chan CKJ, Li J, Chen H, Lin HC, Jin L, Liu J, Sawada N, Yamaji T, Wyatt K, Li AS, Ma H, Zhu M, Wang Z, Cheng S, Li X, Ren Y, Chao A, Iwasaki M, Zhu J, Jiang Fei KG, Wu G, Chen CY, Chen CJ, Yang PC, Yu J, Stevens LV, Fraumeni FJ, Chatterjee N, Gorlova YO, Hsiung AC, Amos IC, Shen H, Chanock JS, Rothman N, Kohno T, Lan Q. Genome-wide association study of lung adenocarcinoma in East Asia and comparison with a European population. Nat Commun. 2023 May 26;14(1):3043.
用語解説
(注1)EGFR遺伝子
非小細胞肺がんの細胞の表面にはEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれるタンパク質がたくさん発現しており、このEGFRは外部から刺激を受けると、がん細胞が増え続ける(増殖)のに必要な信号を細胞内に伝える役割を担っている。
(注2)テロメア
真核生物の染色体の末端部にある構造で、染色体を保護し、維持する働きを持つ。TERT、TERC、POT1などの遺伝子の産物がテロメアの伸長や安定化を制御している。
(注3)遺伝子多型
ヒトゲノムは約30億塩基対のDNAからなるが、血液型などその塩基配列には個人差がある。この違いのうち、集団内で1%以上の頻度で認められるものを多型と呼ぶ。最も数が多いのは一塩基の違いである一塩基置換多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism)であり、ヒトゲノム中1,000万種類のレベルで存在する。多型による塩基配列の違いがタンパク質の量または質の変化を引き起こし、体格、病気の罹りやすさ、医薬品への反応などの個人差をもたらす。
(注4)HLA(human leukocyte antigen)遺伝子
免疫反応を司る遺伝子で、臓器移植における適合性など、免疫反応の個人差の原因となる。代表的な遺伝子は、クラスI遺伝子であるHLA-A、HLA-B、HLA-C、クラスII遺伝子であるHLA-DRB1、HLA-DQA1などである。その個人差の分布は、人種によって大きく異なる。
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