2024-08-26 国立遺伝学研究所
国立遺伝学研究所・鐘巻将人教授のグループはこれまでに、目的タンパク質の分解除去によりタンパク質機能解析を可能にするオーキシン誘導デグロン(AID)法を開発し、さらに近年改良型AID2法を発表してきました(Nishimura et al., Nat. Meth., 2009; Yesbolatova et al., Nat. Commun., 2020)。しかし、鐘巻グループは一部のタンパク質にはAID2法を用いても分解除去が不十分なケースがあることに気づきました。そこで本研究では、AID2とBromoTagという別のデグロンを組み合わせたダブルデグロン技術を開発し、標的タンパク質の超高効率かつ超迅速な分解除去誘導に成功しました。これにより、従来解析が難しかったタンパク質の機能評価を可能にしました。さらに、AID2とBromoTagにより、二つの標的タンパク質を独立に分解制御できることも示しました。
本研究ではさらに、ダブルデグロン技術の応用例として、DNA複製因子を超高効率分解した結果、DNA複製の完全な抑制に成功し、その際に細胞周期がDNA複製なしに分裂期まで進行することを見出しました。この結果は、細胞はこれまで予想されていたDNAが倍化したかどうかを認識するシステムを持たないことを示唆します。本成果はデグロン技術の拡張性を証明するとともに、DNA複製と細胞周期のより深い関係性の理解につながると期待されます。
本研究は国立遺伝学研究所の鐘巻将人教授の研究グループが中心となり、英ダンディー大学のAlessio Ciulli教授、岡山理科大学の林謙一郎教授との共同研究により行われました。
本研究は日本学術振興会科研費(21H04719, 23H04925)、日本科学技術振興機構 CREST(MJCR21E6)によりサポートされ、総研大生博士課程の鳩山雄基は学術振興会特別研究員(DC2)、同Moutushi Islamは文科省国費留学生奨学金を受給しています。
本成果は国際学術誌「EMBO Reports」に2024年8月23日に掲載されました。
図: デグロン技術の組み合わせによる拡張性の概要と、その利用によりDNA複製なしの分裂期までの細胞周期進行を誘導した例。
Combination of AID2 and BromoTag expands the utility of degron-based protein knockdowns
Yuki Hatoyama*, Moutushi Islam*, Adam G. Bond, Ken-ichiro Hayashi, Alessio Ciulli and Masato T. Kanemaki.
EMBO Reports (2024) Aug 23. DOI:10.1038/s44319-024-00224-4