細胞内の流れが卵の極性決定因子を押し流す

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2020-07-27 国立遺伝学研究所

Cytoplasmic streaming drifts the polarity cue and enables posteriorization of the Caenorhabditis elegans zygote at the side opposite of sperm entry

Kenji Kimura and Akatsuki Kimura

Molecular Biology of the Cell (2020) 31: 1765–1773 DOI:10.1091/mbc.E20-01-0058
*FOURTH SPECIAL ISSUE on FORCES ON AND WITHIN CELLS

国立遺伝学研究所・細胞建築研究室では、木村健二助教(現・関西学院大学理工学部講師)が中心となって、細胞内の流れが受精卵の極性形成に寄与する仕組みを明らかにした。本成果は米国細胞生物学会が発行するMolecular Biology of the Cell誌に2020年5月28日(日本時間)に公開された。

生物の発生過程では、細胞極性(細胞内の成分の偏った分布)によって将来の体軸の向きが決定される。その研究モデルとして線虫C. elegansの受精卵が古くから用いられており、精子が持ち込む核と中心体の複合体(SPCC)の卵内における位置が体軸の一つである前後軸の向きを決めることが知られていた(図A:PP-type, SPCC側が後極側(posterior)になる)。しかし、前後軸ができるのは受精から約30分後であり、その間にどのようにSPCCの位置が決まるのか不明であった。今回、ライブイメージングによってSPCCの動きを詳細に追うことで、受精直後に生じる細胞内の流れがSPCCの位置をランダムに変えることが明らかになった(図B)。SPCCは時おり精子が入った側から逆サイドまで流され、その場合、精子が入った側が前極側となった(図A, C:DP-type)。このような動きは細胞内の流れ自体が確率的にふるまうことによる。本研究成果は、線虫の発生が型通りに進む前に、細胞内の流れの確率的な特性が体軸決定に重要なSPCC位置を決めることを初めて示した(図D)。

本研究は、JSPS科研費(JP26840072, JP19K06681, JP16H05119, JP16H00816, JP18H05529, JP18H02414)、NIG-JOINT (76A2019)の支援を受けました。

Figure1

図:(A) 受精直後から第一分裂までの線虫受精卵。白矢印で精子由来の核と中心体の複合体(SPCC)の位置を示した。上段PP-type、下段DP-type (B) SPCCの移動(白丸)と細胞質の流れ(白矢印)は一致した。(C) DP-typeにおけるSPCC軌跡例 (D) 細胞質流動(MeiCS)はSPCCを押し流して前後軸の決定に影響する。

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