認知機能低下患者の顔を見分けることができるAIモデルの開発

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2021-01-26 東京大学,東京都健康長寿医療センター,日本医療研究開発機構

発表者

亀山祐美(東京大学医学部附属病院 老年病科 助教[特任講師(病院)])
亀山征史(東京都健康長寿医療センター 放射線診断科 医長)
飯島勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長/未来ビジョン研究センター 教授)
秋下雅弘(東京大学医学部附属病院 老年病科 教授)

発表のポイント
  • 人工知能(AI)で認知機能の低下した患者と健常者の顔写真を見分けることができました。
  • 顔だけで認知症をスクリーニングできることを示したのは世界で初めてのことです。
  • 顔による認知症の早期発見は、非侵襲的で時間もかからない安価なスクリーニングとして期待されます。
発表概要

認知症は、近年患者数の増加がみられる疾患で、大きな社会問題となっているため、認知症を早期に発見することが必要とされています。この度、東京大学医学部附属病院老年病科の秋下雅弘教授、亀山祐美助教(特任講師(病院))らのグループは、東京都健康長寿医療センター放射線診断科の亀山征史医長らと共同して、人工知能(AI;注1)が認知機能の低下した患者と健常者の顔写真を見分けることができることを世界で初めて示しました。顔による認知症の早期発見は、非侵襲的で時間もかからない安価なスクリーニングとして期待されます。

なお本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業の支援により行われ、日本時間2021年1月26日に米国科学誌Aging(Albany, NY)に掲載されます。

発表内容
(1)研究の背景

認知症は高齢化社会において最も深刻な問題の一つであり、今後の治療戦略においては早期診断がとても重要になってきます。しかしながら、認知症の診断のための検査はさまざまな制約を抱えています。例えば、アミロイドPET(注2)による検査費用は非常に高額であり、脳脊髄液の採取は侵襲的です。そこで、簡単で非侵襲的で安価な認知症のスクリーニングが望まれています。

また、老化は全身的なプロセスのため、顔で判断する見た目年齢は余命、動脈硬化、骨粗鬆症の指標となることが知られています。これまでに東京大学医学部附属病院老年病科秋下雅弘教授、亀山祐美助教(特任講師(病院))らのグループも、見た目年齢が暦年齢よりも認知機能と強い相関を示すことを報告しています(Umeda-Kameyama Y et al., “Cognitive function has a stronger correlation with perceived age than with chronological age”, Geriatr Gerontol Int, 2020;20: 779–784, doi:10.1011/ggi.13972.)。

そこで、本研究グループは、人工知能(AI)を使って、顔の情報から認知機能低下を見つけ出すことができるかどうかを調べました。

(2)研究の内容

東京大学医学部附属病院老年病科を受診して物忘れを訴える患者、および同大学高齢社会総合研究機構が実施している大規模高齢者コホート調査(柏スタディ;注3)の参加者の中から同意を得た方の正面の表情のない顔写真を使い、認知機能低下を示す群(121名)と正常群(117名)の弁別ができるかどうかについて、AIワークステーションで解析しました。何種類か試した中で最もよい成績を示したAIモデルは、感度87.31%、特異度94.57%、正答率92.56%と高い弁別能を示すことができました。AIモデルが算出するスコアは、年齢よりも認知機能のスコアに有意に強い相関を示しました(図1)。さらに、年齢の影響を少なくするため、年齢で2つのグループに分けて解析したところ、どちらの群でも良好な成績を収めることができたため、年齢の影響は少ないだろうと考えられます。また、AIワークステーションによる判断は顔のどの部分で行われているのかわかりづらく、ブラックボックスの側面があるため、顔を上下で分けて解析したところ、どちらも良い成績でしたが、顔の下半分のほうが少し良い成績を示しました。


図1

  1. AIが算出したスコアと認知機能検査(MMSE)との関係。AI算出スコアの高い方が認知機能が低い。
  2. AIが算出したスコアと年齢との関係。AIモデルが算出するスコアは、年齢よりも認知機能のスコアにSteiger検定にて有意(p=3.25×10-35)に強い相関を示しました。
(3)社会的意義・今後の予定

今回の研究は人数も限られているため、そのまますぐに応用ができるわけではありませんが、もっと多くの顔写真を集め、AIに学習させることができれば、将来的にAIを用いて顔で認知機能低下をスクリーニングすることができるようになるかもしれません。実用化を目指して、今後も本成果から得られた方法について研究を深めていく予定です。

発表雑誌
雑誌名
Aging(Albany, NY)(オンライン版:2021年1月26日)
論文タイトル
Screening of Alzheimer’s Disease by Facial Complexion Using Artificial Intelligence
著者
Yumi Umeda-Kameyama*, Masashi Kameyama*, Tomoki Tanaka, Bo‐Kyung Son, Taro Kojima, Makoto Fukasawa, Tomomichi Iizuka, Sumito Ogawa, Katsuya Iijima, Masahiro Akishita(*責任著者)
用語解説
(注1)人工知能(AI)
コンピューターを使って、難しい課題を解決する技術。今回の研究は、AIの中でも、深層学習(deep learning)を使用しました。
(注2)アミロイドPET
アルツハイマー病の主病変タンパク質であるβアミロイドが蓄積しているかを検出するための陽電子断層撮像(PET)検査。
(注3)大規模高齢者コホート調査(柏スタディ)
2012年度から千葉県柏市在住の高齢者を対象に実施しており、健康状態、身体の構造と機能、活動、社会参加、心理及び認知機能等の精緻なデータ収集及び解析を行っています(IOG 東京大学高齢社会総合研究機構:大規模高齢者虚弱予防研究「栄養とからだの健康増進調査」)。
お問い合わせ先

取材に関するお問い合わせ先
東京大学医学部附属病院 パブリック・リレーションセンター
担当:渡部、小岩井

東京大学高齢社会総合研究機構(機構長)/未来ビジョン研究センター

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