リアルワールドデータにおける心血管疾患と脳血管疾患の実態把握の確立と両疾患合併の解明に関する研究

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2022-03-21 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)のオープンイノベーションセンター情報利用促進部の中井陸運室長らの研究チームは、診療群分類包括評価(DPC)の大規模リアルワールドデータを用いて、心血管疾患と脳血管疾患との関連について分析を行いました。本研究成果は、オープンアクセス査読付き科学雑誌「PLOS ONE」にて2022年3月11日に早期オンライン公開されました。

■背景
心血管疾患と脳血管疾患は世界的にも国内的にも主要死因の1つであります。本研究では、循環器疾患診療実態調査のDPCデータを用いて、心血管疾患と脳血管疾患の併存症や合併症に対する相互連関、再入院時の死亡率の検証を行いました。
データ期間は2015年度・2016年度の2年間のデータを使用しました。病名の選別には国際疾病分類第10版(ICD-10)を使用し、心筋梗塞;I21・I22・I24、心不全;I50、心房細動;I48、大動脈解離;I71.0、脳梗塞;I63、脳出血;I61、くも膜下出血;I60の症例を対象としました。また、合併症は、主病名・入院契機・医療資源最大・医療資源2番目・入院後発症の中に上記定義を有する症例としました。さらに、再入院の定義として、(1)初回入院において「併存症に心血管疾患がある、脳血管疾患をもつ症例」あるいは「併存症に脳血管疾患がある、心血管疾患をもつ症例」、(2) 「心血管疾患で初回入院かつ併存症がなく、脳血管疾患にて再入院した症例」あるいは「脳血管疾患で初回入院かつ併存症がなく、心血管疾患にて再入院した症例」のいずれかとしました。

■成果
911病院2,736,986症例 (1,800,255患者)において、541,481症例の心血管疾患、364,625症例の脳血管疾患が抽出されました。心血管疾患における脳血管疾患の併存率は6.0%、合併率は2.1%に対して、脳血管疾患における心血管疾患の併存率は17.8%、合併率は3.3%でありました。脳血管疾患で入院した症例では、心血管疾患を併発しやすい傾向でありました。
また、脳血管疾患の既往がない心血管疾患を参照とした場合、脳血管疾患併存症・脳血管疾患合併症は共に院内死亡のリスクを有意に高める事が示されました。さらに、心血管疾患の既往がない脳血管疾患を参照とした場合、心血管疾患合併症のみが院内死亡のリスクを高める事が示されました。
両疾患併存状態での初回入院と再入院の比較解析において、心血管疾患では大動脈解離、脳疾患ではくも膜下出血が一番高い死亡率でした。また、再入院時は初回入院に比べて院内死亡率が有意に高くなることが観察されました。

■今後の展望
循環器系疾患における二次予防のガイドラインでは、心血管疾患の再発予防が最重要とされているのに対して、脳血管疾患との関連を加味した再発・予後リスクの評価・検討は十分ではありません。本研究の成果が、心血管疾患と脳血管疾患の相互連関に関わる新規臨床研究の基盤データとなり、今後の疫学研究や各都道府県における健康医療推進計画策定に寄与する事が期待されます。

■発表論文情報
筆者:Michikazu Nakai, Yoshitaka Iwanaga, Yoko Sumita, et al.
題名:Associations among cardiovascular and cerebrovascular diseases: analysis of the nationwide claims-based JROAD-DPC dataset
掲載誌:PLOS ONE
DOI: 10.1371/journal.pone.0264390

■謝辞
本研究はAMED(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業「全国的レジストリーによる脳卒中および循環器疾患の実態把握の確立と両疾患合併に関する包括的診療実態解明に関する研究」)、厚生労働科学特別研究(生活習慣病・難治性疾患克服総合研究「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究経費」)より資金的支援を受け実施されました。

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