血液を循環する由来組織別エクソソームマーカー候補を同定

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高精度な次世代バイオマーカー開発に期待

2022-03-22 医薬基盤・健康・栄養研究所

医薬基盤・健康・栄養研究所創薬標的プロテオミクスプロジェクト・疾患解析化学プロジェクトの足立淳プロジェクトリーダー、宇治徳洲会病院外科 長山聡医師らの研究グループは、血液を循環するエクソソームに含まれるタンパク質をカタログとしてiScience誌にて公開しました。
さらに、このカタログを用いて分泌した組織の目印となる組織特異的エクソソームマーカー候補を同定しました。

エクソソーム(細胞外小胞)※1は、分泌元の細胞のタンパク質や核酸を含むことから、様々な疾患の状態を反映した新たなバイオマーカー※2として有望視され、近年、疾患の早期診断や病態のモニタリングのバイオマーカー開発において、血液を循環するエクソソームが注目されており、精力的に研究が進められています。様々な組織から血中に分泌されたエクソソームを用いた診断は、低侵襲であることからも、継続的に観察を行っても患者の負担が少なく、疾患による病態変化を瞬時に捉えることができる可能性が高いと考えられます。

健常者の血清・血漿サンプルからエクソソームを精製し、網羅的定量プロテオーム解析※3により、過去の研究をはるかに上回る4千タンパク質を超える規模で、血液中エクソソームのタンパク質のカタログの作成に成功し、iScience誌に公開しました。本カタログの各タンパク質の血清・血漿別のシグナル強度、個人間差のデータは、次世代ヘルスケア※4にも活用可能です。また本研究では、既知のマーカーと比較して、個人間で変動が少なく、標準化に用いることが期待される新たなマーカータンパク質を複数同定しました。
本研究成果はがん、神経疾患、感染症など様々な疾患における早期診断、病態変化を捉えるためのモニタリングなどへの臨床応用から、病態メカニズム解明などの基礎研究、未病の段階の健康管理などに幅広く貢献することが期待されます。

なお、本研究成果は、3月1日(日本時間)に、「iScience」オンライン版に掲載されました。

https://medibio.tiisys.com/wp-content/uploads/2022/03/220322ketsuekiwozyunkznsuru.pdf
詳しい資料は≫

※用語解説
※1:エクソソーム(細胞外小胞)
ほとんどすべての種類の細胞から分泌される脂質二重膜で囲まれた膜小胞で、親細胞からタンパク質、核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)、脂質、代謝物などを運ぶ、新たな細胞間情報伝達媒体として注目されており、診断や治療に役立つバイオマーカーの開発が急速に展開されている。

※2:バイオマーカー
生体内の物質で、病状の変化や治療の効果の指標となるもの。バイオマーカーは、がん、神経疾患の早期発見や疾患の病態をモニタリングするだけなく、疾患を未然に防ぐための日常的な指標として疾患の予防の他、副作用を回避した有効な治療法を選択する個別化医療への応用にも期待されている。

※3:網羅的定量プロテオーム解析
一度の測定で、網羅的にサンプル中のタンパク質発現量を定量する解析方法。

※4:次世代ヘルスケア
人間の身体、その生理機能から行動におよぶ膨大なデータと、人工知能(AI)をはじめとした最先端のIT技術を組み合わせて、個人が適切なタイミングに必要な予防・未病ケア・治療・介護を受けられるシステム

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生物化学工学
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