2023-01-18 京都大学
木村郁夫 生命科学研究科教授(東京農工大学特任教授)、宮本潤基 東京農工大学テニュアトラック准教授、清水秀憲 Noster株式会社研究グループ長(京都大学生命科学研究科受託研究員)らの研究グループは、漬物やキムチのような発酵食品の生産に用いられる乳酸菌の1種、Leuconostoc mesenteroidesが、砂糖を基質として高産生する菌体外多糖EPS(exopolysaccharide)を摂取することにより、宿主の腸内環境が変化し、主要な腸内細菌代謝物である短鎖脂肪酸の産生量を増加させることで、肥満を防ぐことをマウス実験により明らかにしました。すなわち、この乳酸菌代謝産物であるEPSは食物繊維様物質としてプレバイオティクス効果を発揮することを発見しました。これは、プロバイオティクス乳酸菌として知られていたL. mesenteroidesが、その摂取によりプロバイオティクス効果だけでなく、EPSを介したプレバイオティクス効果も同時に発揮するシンバイオティクス乳酸菌として働くことが期待できる新たな概念の提唱に至ります。また、近年、注目を集めている乳酸菌の代謝産物を摂取することにより健康作用をもたらすポストバイオティクス成分としてもEPSは期待されます。
近年の食の欧米化に伴う肥満や2型糖尿病などの代謝性疾患患者の増加は社会的な問題となっており、その予防・治療法の確立は急務と言えます。腸内環境を制御する食習慣や腸内細菌の代謝産物が、肥満・糖尿病などの代謝性疾患に対する新たな標的として注目される今、ポストバイオティクス成分EPSやシンバイオティクス乳酸菌L. mesenteroidesは、様々な分野における応用が可能となります。
本研究成果は、2023年1月5日に、国際学術誌「Gut Microbes」にオンライン掲載されました。
研究者情報
研究者名:木村 郁夫