植物型α1,3/α1,4-フコース転移酵素が持つユニークなI型二糖構造認識機序を明らかにしました

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2024-03-04 佐賀大学

【研究者】
代表者:岡田貴裕(佐賀大学医学部/助教),角田佳充(九州大学大学院農学研究院/教授)
分担者:寺本岳大(九州大学大学院農学研究院/助教),池田義孝(佐賀大学医学部/教授),井原秀之(佐賀大学医学部/准教授)

【研究成果の概要】
Lewis三糖構造は、動物、植物、細菌に広く共有される糖鎖構造であり、細胞間相互作用を含むさまざまな生命現象の調節に重要な役割を果たしています。この糖鎖構造は、基本骨格(I型/II型二糖構造)の違いに応じてLewis A(I型)またはLewis X(II型)といった2種の形態に分類されますが、これらの合成比率は生物種に応じて大きく異なり、特に、植物ではLewis A三糖構造しか合成されません。
本事象は、合成経路の最終段階を担う「α1,3/α1,4-フコース転移酵素ファミリー」の基質選択性が多様であることと深く関連しています。しかし、なぜ植物において本酵素がII型二糖構造を利用せず、Lewis A三糖構造のみを合成するのか、その分子機序は不明なままでした。

今回、佐賀大学の岡田貴裕助教、九州大学の角田佳充教授らの研究グループは、マンゴー由来α1,3/α1,4-フコース転移酵素のX線結晶構造解析を実施し、糖鎖基質の選択性に寄与する構造的要因を検討しました。これにより、本酵素の糖鎖結合ポケットの構造がI型二糖構造との相互作用に最適化されており、II型二糖構造が結合できない形状になっていることが明らかとなりました。さらに、ヒト由来オルソログや細菌由来オルソログとの比較から、植物型α1,3/α1,4-フコース転移酵素が独自の進化を遂げ、Lewis A三糖構造の生合成に特化した厳密な糖鎖認識機序を獲得してきたことを裏付ける知見を得ました。

植物型α1,3/α1,4-フコース転移酵素が持つユニークなI型二糖構造認識機序を明らかにしました

以上は、α1,3/α1,4-フコース転移酵素のI型糖鎖認識機序に関する初の報告であり、また植物オルソログの立体構造を解明した初の成果でもあります。本研究成果は、2024年2月20日に国際学術誌「Glycobiology」オンライン版に掲載されました。

【発表論文】
・論文タイトル
Crystal structure of mango α1,3/α1,4-fucosyltransferase elucidates unique elements that regulate Lewis A-dominant oligosaccharide assembly
(DOI:10.1093/glycob/cwae015)

・雑誌名
Glycobiology(Oxford Academic;2024年2月20日オンライン版掲載)

・著者
Takahiro Okada1, Takamasa Teramoto2, Hideyuki Ihara1, Yoshitaka Ikeda1, Yoshimitsu Kakuta2

1.佐賀大学医学部
2.九州大学大学院農学研究院

【今後の展開】
今回の研究から、植物型α1,3/α1,4-フコース転移酵素の糖鎖認識ドメインが他の生物種オルソログには見られないユニークな構造からなり、I型二糖構造との相互作用に最適化された厳密な基質認識機構を備えていることが明らかとなりました。この知見は、多様な基質選択性を持ったα1,3/α1,4-フコース転移酵素ファミリーの進化過程の解明に役立つと期待されます。さらに、トランスクリプトーム/グライコミクス情報と組み合わせて総合的な研究を進めていくことで、植物におけるLewis A三糖構造の生物機能をより深く理解する一助となるでしょう。また、Lewis A三糖構造はミルクオリゴ糖に広く見られ、ヒトと微生物の共生メカニズムを理解する上で重要な糖鎖構造です。産業的な視点から見て、今回得られた知見は、このような機能性糖鎖の工業合成に向けた酵素エンジニアリングの分野にも貢献するものと考えられます。

【その他PRしたい特記事項】
本研究は、ニッポンハム食の未来財団平成29年度公募型研究助成事業および日本学術振興会(JP20K06019)、九州大学 大学改革活性化制度の支援のもと実施しました。

【教員活動DBのリンク先】
https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.6ce179406c084d54.html

【本件に関する問い合わせ先】
岡田貴裕
佐賀大学医学部 分子生命科学講座 細胞生物学分野

角田佳充
九州大学大学院農学研究院 生物物理化学研究室

生物工学一般
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