2024-05-20 京都大学
ヒトの骨盤には思春期以降、明確な性差が認められます。しかし、出生前の胎児期における骨盤の性差については、見解が一致していません。ヒトの骨盤は、軟骨原基が骨組織に置き換えられる軟骨内骨化によって形成されます。これまでの胎児期の性差の検討は、軟骨組織から骨組織への置き換え(一次骨化)がある程度進んだ、受精後20週以降が主に対象とされ、一次骨化が開始する受精後9週からを対象とした解析はありませんでした。
この度、金橋徹 医学研究科助教、高桑徹也 同教授、山田重人 同教授、今井宏彦 情報学研究科助教、松林潤 滋賀医科大学特任助教、大谷浩 島根大学教授(現:同学長)らの研究グループは、医学研究科附属先天異常標本解析センターおよび島根大学医学部解剖学講座が所蔵する、受精後9週から23週に相当する頭殿長50~225mmのヒト胎児標本72体のMRI画像を取得し、様々な部位の計測と重回帰分析を行って性差を検討しました。その結果、骨盤上口の前後径、恥骨下角、および坐骨棘間径と大骨盤横径の比に性差が認められました。従来考えられてきた時期よりも早く、一次骨化の開始期には既に骨盤に性差が存在することを示唆する本研究結果は、ヒト胎児骨盤の形態が男女で異なることを理解する上で重要な知見を提供するものです。
本研究成果は、2024年5月7日に、国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「本研究では、一次骨化が開始する受精後9週以降の希少なヒト胎児標本と、正確に立体情報を把握できる高解像度MRI画像を取得できたことで、従来では検討できなかった胎児期初期のヒト骨盤を検討し、性差の存在を証明することができました。本成果で得られた新しい知見は、『胎児期のヒトの骨盤では、性差は十分には分からない』と考えられてきた、これまでの定説を覆すという点で大きな価値を持つと考えます。」(金橋徹)