藻類のCO2吸収の鍵となる細胞外タンパク質の機能を解明~40年来の議論にゲノム編集技術で決着~

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2024-09-03 京都大学

嶋村大亮 生命科学研究科研究員(現:理化学研究所特別研究員)、山野隆志 同准教授らの研究グループは、ゲノム編集技術を用いてモデル緑藻クラミドモナスの変異体を作成し、緑藻の細胞外タンパク質CAH1の機能を明らかにしました。この発見は、CAH1の役割をめぐる40年来の科学的論争を解決し、水圏における光合成の理解を大きく前進させました。

水中ではCO2の拡散が陸上の約1/10,000と極めて遅く、植物が光合成に必要なCO2を十分に取り込むことが難しい状況にあります。多くの水中生物はこれを克服するために、細胞内にCO2を濃縮し効率的な光合成を可能にするCO2濃縮機構(CCM)を進化させてきました。CCMの中心的な役割を果たすのが、CO2と重炭酸イオン(HCO3–)を変換する炭酸脱水酵素です。

同研究グループは2015年に、CCMにおいてHCO3–を細胞内に濃縮する輸送体を同定しています。今回の研究では、1984年に同定された細胞外に存在する炭酸脱水酵素CAH1の機能に焦点を当てました。CAH1の役割は長年不明のままでしたが、今回の発見により、藻類がHCO3–だけでなくCO2も効率的に吸収する仕組みが明らかになりました。

今回の発見により、HCO3–の輸送に加え、CO2の効率的な吸収メカニズムが解明されたことで、水中環境での光合成生物のCO2獲得戦略の全体像がより明確になりました。この研究成果は、将来的に植物の光合成効率向上に向けた研究にも大きな影響を与えることが期待されます。

本研究成果は、2024年8月30日に、国際学術誌「Plant Physiology」にオンライン掲載されました。

藻類のCO2吸収の鍵となる細胞外タンパク質の機能を解明~40年来の議論にゲノム編集技術で決着~

本研究成果のモデル図。炭酸脱水酵素CAH1が水中に豊富に存在するHCO3–をCO2へと変換し、光合成に利用する様子を示している。

詳しい研究内容について

藻類のCO2吸収の鍵となる細胞外タンパク質の機能を解明―40年来の議論にゲノム編集技術で決着―

研究者情報

研究者名:山野 隆志

生物工学一般
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