コケを食する赤いダニ、その予想だにしない多様性 ~両者が織りなすミクロスケールな種間関係を解明~

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2024-09-09 愛媛大学

このたび、愛媛大学理学部卒業生の池田颯希さんらの研究グループは、西日本を中心に緻密な野外調査を行い、コケ食性ダニ類(ケダニ類:マルヒシダニ属)の種多様性、分布、生息環境、および食草利用を明らかにしました。この研究は、依然大部分が未知である「コケと動物の進化史」の実態解明に大きく貢献するものです。
マルヒシダニ属は、捕食性種が大部分を占めるハリクチダニ上科で唯一の植食性グループです。「予想外の植食性」と評される本属のコケ食性種は、約半世紀前に初めて報告されて以降、ほとんど研究されてきませんでした。本研究では、大規模な野外調査と食性調査により、日本から10種のコケ食性種を発見しました。なお、種レベルで食草を突き止めることにより、一部のコケ系統のみを特異的に利用するダニがいることも示唆されました。これらの結果は、マルヒシダニ属がコケ食者の適応進化・多様化様式を究明するうえで格好の研究対象になりうることを示します。コケ食者の研究は、植食者が辿った多様な進化史に光を当て、そこに潜む普遍性を浮き彫りにするものとして、さらなる発展が望まれます。
なお、本研究の成果は、2024年8月22日にダニ学の国際誌である「Experimental and Applied Acarology」にオンライン掲載されました。

コケを食する赤いダニ、その予想だにしない多様性 ~両者が織りなすミクロスケールな種間関係を解明~
マルヒシダニ属の一種の生体。スケールバーは250 μm。

研究のポイント

・大規模な野外調査によりコケ食性ダニ類の見過ごされていた種多様性を解明した。
・複数種のダニにおいて、特定のコケ系統への特殊化が進化した可能性が示唆された。
・本群はコケ食性節足動物の進化・多様化様式究明における格好の研究対象となりうる。

論文情報

掲載誌:Experimental and Applied Acarology
DOI:https://doi.org/10.1007/s10493-024-00954-z
題名:Unveiled species diversity of moss‑feeding mites (Stigmaeidae: Eustigmaeus): a research on their distribution, habitat, and host plant use in Japan
(和訳)明らかになったセン類食性ダニ類(ナガヒシダニ科:マルヒシダニ属)の種多様性:日本における分布、生息環境、および寄主利用の調査
著者: Satsuki Ikeda, Yuya Inoue, Yume Imada

プレスリリース資料はこちら(PDF 927KB)

本件に関する問い合わせ先

愛媛大学理学部事務課総務チーム

生物化学工学
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