2024-10-23 弘前大学
弘前大学農学生命科学部 生物学科 助教 橋本 洸哉
本件のポイント
- 人為的な環境変化(かく乱)が生態系にどのような影響を及ぼすかを予測することは、環境保全の観点から重要な課題とされます。しかし、生物同士の関係性(生物間相互作用)は非常に複雑で、さらに関係性の強弱や正負が「変わりやすい」という特徴をもつため、かく乱の影響を正確に予測することは困難です。
- 研究チームは、生物間相互作用の「変わりやすさ(変動性)」が、農薬によるかく乱の下での生物密度※1 の安定性※2 に対して、どのように作用するかを実験的に明らかにしました。特に、相互作用の変動性のタイプによって、かく乱に対する安定性を高める場合と、逆に安定性を低下させる場合があることを突き止めました。
- 本研究の成果から、相互作用の変動性のタイプをあらかじめ把握することで、人為的なかく乱が生じた場合に密度が不安定化しやすい生物を特定し、事前に保全対策を講じる可能性が広がります。本研究は、2024年10月22日19時(日本時間)に、Communications Biology誌に掲載されます。
用語説明
※1.生物密度…単位面積あたりの生物の個体数または重量のこと。単に「密度」ともいう。
※2.安定性…この研究では、かく乱が生じたときの生物密度の変化のしにくさを指す。密度が変化しにくくなる場合には「安定化」、変化しやすくなる場合には「不安定化」という。生物密度の安定性が損なわれると、その生物の局所的な絶滅が生じやすくなる。
論文情報
タイトル:Multifaceted effects of variable biotic interactions on population stability in complex interaction webs
著者:Koya Hashimoto, Daisuke Hayasaka, Yuji Eguchi, Yugo Seko, Ji Cai, Kenta Suzuki,
Koichi Goka, and Taku Kadoya
掲載誌:Communications Biology
DOI:10.1038/s42003-024-06948-2
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