血液中マイクロRNAがんマーカー~ 初の大規模臨床試験 乳がんの新検診法開発目指して4道県で実施~

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2020-12-14 国立がん研究センター,国立国際医療研究センター,日本対がん協会,日本医療研究開発機構

発表のポイント

  • 血液中マイクロRNAがんマーカーの乳がん検診での応用を検証する、3000人対象大規模臨床試験を開始します。
  • 全国4道県の日本対がん協会各支部で乳がん検診を受ける方へご協力をお願いして実施します。
  • 「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」の研究成果を用いた初めて臨床試験で、まずは乳がんで検証します。

概要

国立研究開発法人 国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区)中央病院(病院長:島田和明)バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室の加藤健室長らの研究グループは、血液検査による簡便で精度の高い乳がんの早期発見方法の開発をめざし、3000人を対象とした大規模臨床試験を2020年12月より全国4道県(愛媛県、鹿児島県、北海道、福井県)で順次開始します。

本試験で用いるのは、各検診機関で乳がん検診を受診される方の血液検体です。がん等の疾患にともなって種類や量が変動することが明らかになっている血液中のマイクロRNAを測定します。この測定には、13種類のがんを対象にした「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」(2014~18年度)で開発された診断モデルと検出技術を用います。本試験は、この基礎研究での成果を実際のがん検診で応用できるかどうかを検証するために計画されたもので、13種類一つひとつのがんについて精度を検証していく必要があるとの考えから、まずは検出方法の開発が先行している乳がんを対象に初めて実施します。

研究班は、国立がん研究センターを中心に、国立国際医療研究センター、東京医科大学、日本対がん協会、東レの研究者らで構成し、北海道と福井県、愛媛県、鹿児島の各日本対がん協会支部、がん専門病院、大学病院などの協力を得て実施します。

血液中マイクロRNAがんマーカー~ 初の大規模臨床試験 乳がんの新検診法開発目指して4道県で実施~

マイクロRNAがんマーカー性能検証試験の実施方法

各道県の日本対がん協会各支部で乳がん検診を受けた方に協力を求めて血液を提供していただき、乳がんに関連するマイクロRNAがんマーカーを東レの3Dジーンという技術で測定します。その結果と、実際の乳がん検診(マンモグラフィー)結果、精密検査として実施される乳腺エコー検査結果などを比較分析し、マイクロRNAがんマーカーの性能を評価します。

開始時期・場所(終了はいずれも2022年3月)

愛媛県
開始:2020年12月下旬より本格化(2019年8月より試行的に実施)
場所:(検診)愛媛県総合保健協会、(精密検査)四国がんセンター、愛媛県立中央病院

鹿児島県
開始:2021年1月より開始
場所:(検診)鹿児島県民総合保健センター、(精密検査)鹿児島大学病院

北海道
開始:準備が整い次第
場所:(検診)北海道対がん協会、(精密検査)北海道がんセンター

福井県
開始:準備が整い次第
場所:(検診)福井県健康管理協会、(精密検査)福井県立中央病院

参加対象

各検診機関で乳がん検診を受診される40歳から69歳の方で文書による同意が得られた方

登録目標

3000人(マンモグラフィーで要精検と判定された方2000人、精検不要と判定された方1000人)

実施方法

参加いただいた方には全員、マンモグラフィーのほか、乳腺エコー検査を受けていただきます(マンモグラフィーで「要精検」と判断された方は精密検査で、「精検不要」と判断された方には本研究による乳腺エコー検査)。採血は9mlで、マイクロRNAがんマーカーを測定します。

評価

マンモグラフィーの結果、乳腺エコーの結果、マイクロRNAがんマーカーの測定結果を比較し、分析します。がんの発見については、まず精密検査による発見で分析し、最終的にはがん登録の情報をもとに分析します。

注意点

マイクロRNAの測定結果は、参加いただいた方にお知らせしません。(マイクロRNAがんマーカー測定結果と、がん発見との関連を評価するのが本試験であるため。)

本試験の意義

血液検査によるがん検診は、手軽で侵襲性が少ないことから、その開発が期待されています。例えば、現行のがん検診の手法にはX線を使うものがありますが、X線の被ばくを減らせるなど、検査時の様々な負担が軽減されます。しかし、血液検査によるがん検診の精度に関しては、まだ十分な検証が行われていません。
がん検診に適した検査には、▽健康な方々(症状のない方々)の中から早期のがんを発見できる▽早期治療により死亡率減少につながる▽検診を行うことによる不利益が小さい▽安価に検査できる――といったことが求められます。既存の検診手法が確立している場合は、その手法と比較して、評価することも欠かせません。

本試験は、マイクロRNAをマーカーとした血液検査によるがん検診の精度について、基礎研究での成果が、実際のがん検診においても同等の性能を発揮するのかを検証するための試験です。血液中マイクロRNAがんマーカーの乳がん検診での応用につながることが期待されます。

AMED事業等について

現在、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 革新的がん医療実用化研究事業「血中マイクロRNAがんマーカーの検診コホートにおける性能検証研究」(研究代表者:加藤健、2019~2021年度)を実施しています。また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」プロジェクト、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業として、2014~18年度までに行われた研究成果を活用しています。
乳がんや大腸がんなど13種類のがんを1回の採血で発見できる次世代診断システムの基盤開発のため実施され、国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターの患者さんの検体提供のご協力のもと研究を重ね、胃がんをはじめ多くのがんで90%以上の確率でがんを判断できることを突き止め論文として発表しています。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(2014年6月11日)
乳がんや大腸がんを1回の採血で発見 ―マイクロRNAに着目した診断技術を開発へ―

(外部サイトへリンクします)

診断モデル開発の研究成果リリース

食道がん(2019年7月11日)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/0711/index.html
骨軟部腫瘍の良悪性(2019年3月28日)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/0328/index.html
卵巣がん(2018年10月17日)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/1017/index.html

論文

Clin Cancer Res 2019. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-18-2849.
Cancer Sci. 2018 Nov 1. doi: 10.1111/ cas.13856.
Clin Cancer Res 2019;25(6):1817-1827
Nat Commun. 2018 Oct 17;9(1):4319
Nat Commun. 2019;10(1):1299
Cancer Science. 2016, 107,326–334,
他多数

報道関係からのお問合せ

研究全般に関するお問合せ
国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院
バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室長 加藤健

乳がんでの研究に関するお問合せ
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター
乳腺・腫瘍内科/臨床ゲノム科 下村昭彦

検診機関等に関するお問合せ
公益財団法人 日本対がん協会
がん検診研究グループ 小西 宏

その他全般
国立研究開発法人 国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室

AMEDの革新的がん医療実用化研究事業に関するお問合せ
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
ゲノム・データ基盤事業部 医療技術研究開発課

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