2021-01-12 京都大学
武田和也 理学研究科博士課程学生、門川朋樹 同教務補佐員、川北篤 東京大学教授の研究グループは、ツルニンジン(キキョウ科)、コシノコバイモ(ユリ科)という釣鐘型の花を持つ2種の植物が、滑りやすい花びら(花弁、または花被片、以下、花弁)を持つことでアリの花への侵入を妨げていることを報告しました。
電子顕微鏡を用いた花弁表面の微細構造の観察や行動実験からは、2種の花弁上に微細なワックス結晶が存在することで滑る表面が形成されていることが示唆されました。また、人工的に花上に経路を設けた野外操作実験から、滑る花弁が実際にアリの侵入を妨げていることが確認されました。侵入したアリは花粉媒介者を攻撃、排除するために植物の繁殖に悪影響を与えることが知られており、本研究でも花粉媒介者の滞在時間を減少させることが示されました。滑る花弁によって花を訪れる動物を選別するという防衛機構が存在することを実証したのは本研究が初となります。
本研究成果は、2021年1月6日に、国際学術誌「Annals of Botany」のオンライン版に掲載されました。
図:花弁表面のワックス結晶が存在する部位では、アリは滑って歩くことができない。滑る領域があることでアリの侵入は妨げられるが、内部にワックス結晶を持たない部位が存在し、花粉媒介者は侵入できる。