2021-01-27 国立遺伝学研究所
De novo genome assembly of two tomato ancestors, Solanum pimpinellifolium and S. lycopersicum var. cerasiforme, by long-read sequencing.
Takei H, Shirasawa K, Kuwabara K, Toyoda A, Matsuzawa Y, Iioka S, Ariizumi T
DNA Research 2020 January 20 DOI:10.1093/dnares/dsaa029
図: 本研究でゲノム配列を決定した二つのトマト祖先種(SP: Solanum pimpinellifolium, SLC: Solanum lycopersicum var. cerasiforme)(A)成熟果実、(B) 成熟果実の横断面、(C) 花序の形態
トマトは世界で最も生産される野菜の一つであり、農業的かつ経済的に非常に重要な作物です。近年、特に健康志向の高まりや地球規模での気象変動により、より安定的に生産できる品種や、機能性成分がより含まれたトマト品種の開発が世界的に重要な課題となっています。形質を改良する育種の過程においては、様々な品種間、あるいは雑種の間で交雑を繰り返して、より優れた品種を作り上げますが、有用な形質を保有する遺伝資源との交雑が優れた品種を作り上げる鍵となります。
トマトの祖先種であるSolanum pimpinellifoliumとSolanum lycopersicum var. cerasiformeは、いずれも現在栽培されているトマトとの交雑が可能です。これらの種は、環境ストレスへの耐性など、栽培種トマトにはない優れた形質を含んでおり、品種改良における有用遺伝子のドナーとなり得ますが、そのゲノム情報は、あまり明らかにされていませんでした。
そこで本研究チームは、長いDNAを解読する技術(ロングリードシーケンシング)を用いて、この二つの祖先種のゲノム情報を高精度に解読し、ゲノムにコードされる遺伝子情報を明らかにしました。本研究成果は、今後、有用な遺伝子を同定する手がかりとなり、トマトの品種改良に貢献すると期待されます。
本研究は、イノベーション創出強化研究推進事業(30010A)、科研費・基盤B(17H03761)、科研費・特別研究員奨励費(18J20505)、先進ゲノム支援(16H06279)のプロジェクトの一環として実施されました。
本研究成果は、2021年1月20日にDNA Researchに掲載されました。
遺伝研の貢献
ロングリードが取得できるPacific Biosciences社のSequelシステムを用いて、トマトの祖先と考えられる2つの野生種ゲノムのショットガンシーケンスや機能遺伝子の全長配列を決定し、ゲノム解読の基盤となる情報を整備しました。本解析は2019年度先進ゲノム支援の支援課題としておこなわれたものです。