光合成真核生物で初の光化学系Ⅰ複合体の多量体構造を解明~原核生物から真核生物への進化を解明する糸口に~

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2022-03-31 岡山大学,神戸大学,理化学研究所

◆発表のポイント

  • 光合成真核藻類である灰色藻由来の光化学系I(PSI)の四量体構造をクライオ電子顕微鏡により決定しました。
  • PSI単量体間の特殊な相互作用が四量体化の要因であることを明らかにしました。
  • 藻類や陸上植物といった光合成真核生物のPSIは単量体であり、原核生物であるシアノバクテリアのPSIは三量体や四量体であることが知られているため、灰色藻が光合成原核生物と真核生物をつなぐ進化の中間地点に位置することを示唆しました。

岡山大学異分野基礎科学研究所の長尾遼特任講師、加藤公児特任准教授、沈建仁教授の研究グループは、神戸大学の秋本誠志准教授と理化学研究所環境資源科学研究センターの堂前直ユニットリーダーとの共同研究により、クライオ電子顕微鏡を用いた灰色藻の光化学系I(PSI)四量体の立体構造解析に成功しました。PSI四量体はPSI二量体が二つ結合して構成されていました。PSI単量体を構成する特定のサブユニットが他の光合成生物と異なる構造を形成した結果、PSI四量体が生じたと考えられます。光合成真核生物のPSIはすべて単量体であるため、光合成真核生物のPSI多量体構造の報告はこれが初めてになります。光合成原核生物のPSIは三量体や四量体を形成するため、灰色藻は光合成原核生物と真核生物の中間に位置する真核藻類であることが、PSIの立体構造からも示唆されました。本研究成果は、日本時間3月30日(午後7時)(英国時間:30日午前10時)、英国の科学雑誌「Nature Communications」に掲載されます。

◆研究者からひとこと
灰色藻のPSIが多量体を形成するかもしれないという報告は10年前にありました。本研究で実際に灰色藻PSIが四量体であることを明らかにしました。光合成真核生物のPSIは単量体であるため、真核藻類である灰色藻のPSIが四量体を構成するという結果に驚きました。同時に、光合成生物の進化について、立体構造解析の観点から提示できたことが良かったです。
長尾特任講師

■論文情報
論文名:“Structure of a tetrameric photosystem I from a glaucophyte alga Cyanophora paradoxa ”
「灰色藻の光化学系I複合体の立体構造解析」
掲 載 紙:Nature Communications
著 者:Koji Kato, Ryo Nagao, Yoshifumi Ueno, Makio Yokono, Takehiro Suzuki, Tian-Yi Jiang, Naoshi Dohmae, Fusamichi Akita, Seiji Akimoto, Naoyuki Miyazaki, and Jian-Ren Shen
URL/DOI:https://www.nature.com/articles/s41467-022-29303-7

光合成真核生物で初の光化学系Ⅰ複合体の多量体構造を解明~原核生物から真核生物への進化を解明する糸口に~

詳しい研究内容≫

<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
特任講師 長尾 遼 (ながお りょう)

生物化学工学
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