2025-02-21 国立遺伝学研究所
負に帯電したゲノムDNAは、正に帯電したコアヒストン八量体に巻きつくことでヌクレオソームを形成します。これらのヌクレオソームは、タンパク質やRNAとともに細胞核内で自己組織化し、クロマチンを構築します。高等真核細胞では、クロマチンはループを形成し、それがさらに折りたたまれてクロマチンドメインとなり、ゲノムの機能単位として働きます。クロマチンの構造には、クロマチン結合タンパク質、ヒストン修飾、転写状態、高分子混雑、陽イオンなどのさまざまな要因が大きく影響するため、クロマチンドメインが細胞内でどのように形成されるのかは、いまだ明らかになっていません。京都大学・福井記念研究センターの藤城新 研究フェローと笹井理生 研究員、国立遺伝学研究所の前島一博 教授らは、本総説において、クロマチンドメインの形成メカニズムについて、相分離や凝縮の観点を含め、物理的な視点から考察しています。
本研究は、JSPSおよびMEXT KAKENHIの助成金(JP20H05936、JP22H00406、JP23K17398、JP24H00061)および武田科学振興財団の助成を受けて実施されました。
図:細胞核内のクロマチン階層構造の模式図
DNAはヒストン八量体に巻き付き、ヌクレオソームを形成している。ヌクレオソームの鎖はコンパクトなクロマチンの塊 (ドメイン) を形成し、ドメイン同士が相互作用することでコンパートメントができる。コンパートメントAとBはそれぞれ、転写がアクティブなクロマチンと、転写が不活性なクロマチンを表すと考えられている。間期の染色体は、染色体領域を形成する複数のコンパートメントからなる。この模式図は、現在考えられているモデルを単純化して示したものであり、実際はもっと複雑な階層構造を形成していると考えられる。
Chromatin domains in the cell: phase separation and condensation
Shin Fujishiro*, Masaki Sasai*, and Kazuhiro Maeshima*
*Corresponding author
Current Opinion in Structural Biology Volume 91, April 2025, 103006 DOI:10.1016/j.sbi.2025.103006
Free download link for 50 days [Available online 20 February 2025]