植物の枝分かれ制御ホルモン「ストリゴラクトン」の受容メカニズムを解明

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2019-01-18 京都大学

山口信次郎 化学研究所教授(兼・東北大学客員教授)、安井令 東北大学博士課程学生、瀬戸義哉 明治大学専任講師らの研究グループは、植物の枝分かれを適切に制御するホルモン「ストリゴラクトン」の受容メカニズムを解明することに成功しました。

これまでに、ストリゴラクトンが植物ホルモンとして働く際には、DWARF14(以下D14)タンパク質が受容体として働くことが分かっていました。しかし、D14によるストリゴラクトンの分解と、ホルモン信号伝達の関係性は十分に解明されていませんでした。

本研究グループは、D14とストリゴラクトンの詳細な相互作用解析や変異型D14を利用した研究により、「D14はストリゴラクトン分子そのものを認識して信号を伝達し、その後ストリゴラクトンを分解して不活性化する」ことを突き止めました。

本研究成果は、ストリゴラクトンの受容メカニズムに基づいた、新たな枝分かれ制御法の開発などにつながることが期待されます。枝分かれは最終的な花や種子の数と質に影響を与えることから、枝分かれの制御を通じて、作物の増収やバイオマスの増産などが期待されます。

本研究成果は、2019年1月14日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究で新たに提唱されたD14によるストリゴラクトン信号伝達メカニズムのモデル図(A)と、これまでに提唱されていたメカニズムのモデル図(B)。

書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1038/s41467-018-08124-7

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/236051

Yoshiya Seto, Rei Yasui, Hiromu Kameoka, Muluneh Tamiru, Mengmeng Cao, Ryohei Terauchi, Akane Sakurada, Rena Hirano, Takaya Kisugi, Atsushi Hanada, Mikihisa Umehara, Eunjoo Seo, Kohki Akiyama, Jason Burke, Noriko Takeda-Kamiya, Weiqiang Li, Yoshinori Hirano, Toshio Hakoshima, Kiyoshi Mashiguchi, Joseph P. Noel, Junko Kyozuka & Shinjiro Yamaguchi (2019). Strigolactone perception and deactivation by a hydrolase receptor DWARF14. Nature Communications, 10:191.

詳しい研究内容について

植物の枝分かれ制御ホルモン「ストリゴラクトン」の受 容メカニズムを解明
~受容体タンパクがストリゴラクトンの受容と不活性化を担うことを発見~
【概要】植物ホルモン※1 の一種である「ストリゴラクトン」は(図 1)、栄養環境に応じて植 物の枝分かれを適切に制御する重要な分子です。東北大学大学院生命科学研究科の山口 信次郎客員教授(現京都大学化学研究所・教授)と博士課程学生の安井令は明治大学農 学部の瀬戸義哉専任講師(元東北大学生命科学研究科助教)らとの共同研究で、植物の 枝分かれ制御ホルモン「ストリゴラクトン」の受容メカニズムを解明することに成功し ました。
これまでに、ストリゴラクトンが植物ホルモンとして働く際には、DWARF14(以下 D14)タンパク質が受容体として働くことが分かっていました。D14 は、ホルモン受容 体には珍しく、加水分解酵素ファミリー※2に属しており、実際にストリゴラクトンを分 解することが出来ます。しかしながら、D14 によるストリゴラクトンの分解と、ホルモ ン信号伝達の関係性は十分に解明されていませんでした。山口教授らは、D14 とストリ ゴラクトンの詳細な相互作用解析や、分解反応に必要な D14 のアミノ酸残基を置換し た変異型 D14 を利用した研究により、『D14 はストリゴラクトン分子そのものを認識し て信号を伝達し、その後ストリゴラクトンを分解して不活性化する』ことを突き止めま した(図 2A)。
この成果は、ストリゴラクトンの受容メカニズムに基づいた、新たな枝分かれ制御法 の開発などにつながることが期待されます。枝分かれは最終的な花や種子の数と質に影 響を与えることから、枝分かれの制御を通じて、作物の増収やバイオマスの増産などが 期待されます。本研究成果は、2019 年 1 月 14 日午後 7 時に英国科学誌 Nature Communications に掲載されました。【研究の背景】
植物の枝分かれ制御ホルモンの「ストリゴラクトン」は(図1)、栄養環境に応じて 植物の枝分かれを適切に制御する重要な分子です。また、それだけではなく、ストリ ゴラクトンは根から放出され、植物にリンなどの無機栄養を供給してくれる共生菌で あるアーバスキュラー菌根菌※3を活性化し、共生を促す作用も有しています。その一 方で、アフリカなどで大きな被害をもたらしている根寄生雑草ストライガ※4は、この ストリゴラクトンを感知して発芽し、作物などの根に食いついて、水や養分を奪って 枯らしてしまうことが知られています。ストリゴラクトンが植物ホルモンとして働く 際には、DWARF14(以下D14)タンパク質が受容体として働くことが分かっていま した。ストリゴラクトン受容体D14は、加水分解酵素に属するタンパク質です。これ までの研究により、D14はストリゴラクトン存在下において、信号伝達におけるパー 植物の枝分かれ制御ホルモン「ストリゴラクトン」の受 容メカニズムを解明 ~受容体タンパクがストリゴラクトンの受容と不活性化を担うことを発見~ トナータンパク質と複合体を形成し、それによってホルモン信号を伝達することが明 らかとなっていました。一方で、D14とストリゴラクトンを混ぜた場合には、D14の 有する酵素機能により、ストリゴラクトンが分解されることも知られていました。ホ ルモン分子に対して酵素としても作用できる受容体タンパク質は、植物ホルモンにお いては他に例を見ないものであり、D14の加水分解酵素としての機能と信号伝達能の 関係性は、大きな議論になっていました。2016年には、D14がストリゴラクトンを分 解する途中で、D14とストリゴラクトン分子の一部が結合した複合体を形成し、その 際にD14タンパク質の形が変化することで、パートナータンパク質との相互作用が誘 導されるという新たなモデルが提唱されました(図2B, Yao et al, Nature, 2016)。し かしながら、本仮説には幾つかの疑問点も残されており、更なる検証が必要だと考え られました。【研究手法と成果】
研究グループは、まずD14とストリゴラクトンの相互作用の詳細な解析を実施しま した。その際、受容体タンパク質の熱変性温度の変化を指標に、受容体-低分子の相 互作用を評価することが出来るDifferential Scanning Fluorimetry(DSF)法※5を利 用し、様々なストリゴラクトン類縁体分子とD14との相互作用を調べました。ストリ ゴラクトンはD14の熱変性温度を低下させることが知られていましたが、研究グルー プは、様々なストリゴラクトン類縁体の中でも枝分かれ抑制活性のあるストリゴラク トン類縁体によってのみ、D14の熱変性温度の低下が引き起こされることを突き止め ました。すなわち、D14の熱変性温度の低下は、受容体として信号伝達可能な状態へ の変化と強い相関があると考えられました。続いて、DSF法による熱変性温度の低下 と、D14によるストリゴラクトンの分解反応を継時的にトレースしました。すると、 D14の熱変性温度の低下は、D14とストリゴラクトンを混ぜた直後において最も顕著 であり、その後、ストリゴラクトンの分解が進行するにつれて、熱変性温度の変化も 徐々に低下していくことが明らかとなりました(図3)。すなわち、基質であるストリ ゴラクトンの残存量と、熱変性温度の変化に極めて強い相関が見られました。この結 果は、分解途中の中間体や、反応産物ではなく、分解される前のストリゴラクトンそ のものがD14の熱変性温度の変化を誘導していることを示しています。
次に研究グループは、シロイヌナズナのD14を利用し、加水分解反応を触媒するた めに必要なアミノ酸残基に点変異を導入した変異導入型D14を複数作製し、その機能 解析を行いました。その結果、全ての変異体タンパク質において、酵素機能の著しい 低下が見られたのに対し、興味深いことに、そのうちの一つであるD218A変異体はシ ロイヌナズナのd14変異体植物の枝分かれ過剰な表現型を完全に相補することが分か りました(図4)。すなわち、この変異体においては酵素機能が消失したにもかかわら ず、ストリゴラクトンを受容して信号を伝達する能力は保持していたということが出 来ます。以上の結果から、D14によるストリゴラクトンの分解は、ホルモン信号を伝 達するためには必須ではないということが明らかとなりました。
また、D14はストリゴラクトンを分解することにより、信号を伝達し終わった分子 を速やかに活性のない状態に代謝していることも見出しました。つまり、D14による ストリゴラクトンの分解は、信号を伝達して不要になったホルモン分子の不活性化の ためであったということが出来ます。

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