骨軟部腫瘍の良悪性を高精度に識別可能なマイクロRNAの診断バイオマーカー同定

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2019-03-28 国立がん研究センター,慶應義塾大学医学部,日本医療研究開発機構

本研究のポイント

  • 過去最多の症例数で骨軟部腫瘍の血清マイクロRNAの網羅的発現解析を行った。
  • 血清マイクロRNAを用いる事で、悪性の骨軟部腫瘍を特異的に鑑別可能な高精度の新規診断バイオマーカーを同定した。

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)研究所分子細胞治療分野(落谷孝広 プロジェクトリーダー [現 東京医科大学 医学総合研究所 分子細胞治療部門 教授]、松崎潤太郎 特任研究員)、中央病院骨軟部腫瘍科(川井章 科長、浅野 尚文 医員 [現 慶應義塾大学医学部整形外科学教室 助教])、分子発がん研究ユニット(土屋直人 ユニット長)らの研究チームは、悪性の骨軟部腫瘍を血液で高精度に識別可能な新規診断バイオマーカーを同定しました。

本研究では、悪性、中間型、良性の骨軟部腫瘍患者897例、健常人275人、他がん240例の血液中のマイクロRNAを網羅的に解析し、悪性の骨軟部腫瘍で高発現の7種のマイクロRNAを組み合わせ診断指標とすることで、悪性に対し感度90%、特異度95%と非常に高い精度検出可能であることを確認しました。本研究結果から、血清マイクロRNAを用いた診断が、骨軟部腫瘍における良悪性の早期診断や悪性腫瘍の再発モニタリングに有用である可能性が示唆され、今後の臨床応用を目指して、現在前向き臨床試験を実施中です。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」の支援を受け行ったもので、研究成果は英国科学誌「Nature Communications」に3月21日付で掲載されました。

本研究成果について、国立がん研究センター中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長の川井 章は次のように述べています。「本研究は、診断の困難な希少がんである骨軟部腫瘍の診断精度の向上、再発の早期診断などが微量の血液検査で可能となる可能性を示した点で大きな意義があると考えます。今後、さらに検証を重ねて、実際の臨床の現場で役立つバイオマーカーとなることを期待しています。」

背景

骨軟部腫瘍(肉腫)は、腕や足の他、胸部や腹部などの骨や軟部から発生する悪性腫瘍です。希少で多種多様な組織亜型が存在するため、適正な早期診断が難しく、主に非専門施設などで初期診断を良性腫瘍などと間違って診断され、適切な初期治療が受けられずに不幸な転帰を辿る例も少なからず存在します。そのため、簡便で有用な診断マーカーの開発は本腫瘍の治療成績向上に急務の課題です。

マイクロRNAは、血液や唾液、尿などの体液に含まれる22塩基程度の小さなRNAのことで、近年の研究で、がん等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになっています。そのため、患者さんの負担が少ない診断バイオマーカーとして期待されています。本研究は、骨軟部腫瘍患(肉腫)に特異的なバイオマーカーを同定することを目指し実施しました。

研究方法

2007年から2013年に国立がん研究センターを受診した1歳から97歳の骨軟部腫瘍患者のうち、治療前血清が研究利用可能であった1002例を対象としました。凍結保存血清よりRNAを抽出し、マイクロアレイ(DNA チップ、3D-Gene)にてマイクロRNA2,565種類の網羅的な発現データを取得した。対照として健常人、他がんの血清より取得したアレイデータを使用しました。初発の良悪性腫瘍症例を探索群、訓練群(1)・(2)、検証群に割り当てて、肉腫に特異的なバイオマーカーの探索と検証を行いました。

骨軟部腫瘍の良悪性を高精度に識別可能なマイクロRNAの診断バイオマーカー同定

研究結果

最終的に骨軟部腫瘍患者897例(悪性:414例、中間悪性:144例、良性:339例)と健常人275人、他がん240例のデータを解析に使用しました。その結果、血清マイクロRNAの発現様式の特徴は、悪性と良性で異なる集団を形成しました。一方、組織亜型間の発現様式の特徴には、大きな差は認められませんでした。

探索群(悪性77例、良性84例)において良悪性間で有意に発現差のある83種のマイクロRNAの内、訓練群(1)(悪性117例、良性109例、健常人150例)で、健常人、良性、悪性の順に高発現であり、訓練群(2)(悪性10例、良性10例)においてqRT-PCR法で検証に成功した12種のマイクロRNAをバイオマーカー候補として選定しました。これら12種のマイクロRNAの内、7種を用いた診断指標VIでは、検証群(悪性107例、良性124例、健常人125例)で、感度90%、特異度95%と悪性に対し非常に高い診断精度を確認しました。

結論

過去最多の症例数で骨軟部腫瘍の血清マイクロRNAの網羅的発現解析を行いました。血清マイクロRNAを用いる事で、悪性骨軟部腫瘍を特異的に鑑別可能な高精度の新規診断バイオマーカーを同定しました。
本研究結果から、血清マイクロRNAを用いた体液診断は、骨軟部腫瘍における良悪性の早期診断や悪性腫瘍の再発モニタリングに有用である可能性が示唆され、今後の臨床応用を目指して、現在前向き検証試験を実施中です。

図表2

図:ROC曲線
選定された7つの血清マイクロRNA各々のROC曲線(左)と7つの血清マイクロRNAを用いた判別式Index VIのROC曲線(右)

発表論文

雑誌名:Nature Communications
タイトル:A serum microRNA classifier for the diagnosis of sarcomas of various histological subtypes
著者:Naofumi Asano, Juntaro Matsuzaki, Makiko Ichikawa, Junpei Kawauchi, Satoko Takizawa, Yoshiaki Aoki, Hiromi Sakamoto, Akihiko Yoshida, Eisuke Kobayashi, Yoshikazu Tanzawa, Robert Nakayama, Hideo Morioka, Morio Matsumoto, Masaya Nakamura, Tadashi Kondo, Ken Kato, Naoto Tsuchiya, Akira Kawai, and Takahiro Ochiya

報道関係のお問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室

慶應義塾大学

AMED事業に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
創薬戦略部医薬品研究課

医療・健康細胞遺伝子工学
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