子宮腺筋症のゲノム解析から発症と子宮内膜症併発に関連する遺伝子変異を発見~発症機構の解明に期待

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2019-12-20   国立がん研究センター,東京大学医学部附属病院,順天堂,がん研究会,日本医療研究開発機構

本研究成果のポイント

  • 世界に先駆けて子宮腺筋症の遺伝子変異の特徴を明らかにしました。
  • 見かけ上、正常な子宮内膜においても、病変部と同一の遺伝子変異が、高頻度に見られることが分かり、子宮腺筋症の発症機構の一部を明らかにしました。
  • 子宮内膜症の病変部と同一の遺伝子変異が、子宮腺筋症の病変部でも見られたため、高頻度に子宮内膜症を併発する理由も明らかになりました。

国立研究開発法人国立がん研究センターは、国立大学法人東京大学、学校法人順天堂、公益財団法人がん研究会などと共同で、世界に先駆けて子宮腺筋症のゲノム解析と患者さんの臨床情報との統合的解析を行いました。その結果、子宮腺筋症がゲノム異常を伴う多クローン性増殖疾患(注1)であることを突き止めると共に、高頻度に子宮内膜症を併発する原因を明らかにしました。本研究成果は、英国オンライン科学雑誌「Nature Communications」に、12月19日付で掲載されました。

研究概要

子宮腺筋症(注2)は、激しい月経痛を伴い、また不妊の原因にもなり、女性にとって深刻な疾患です。しかし、子宮腺筋症の発症の機構は明らかでなく、しばしば子宮内膜症(注3)を併発しますが、その原因も分かっていませんでした。

研究チームはこれらを解明するため、子宮腺筋症と子宮内膜症を併発した患者さんのゲノム解析を行い、またこの結果と患者さんの臨床情報を照合しました。その結果、子宮腺筋症がゲノム異常を伴う多クローン性増殖疾患であることを初めて明らかにすると共に、子宮内膜症を併発する患者さんの約4割で、子宮内膜症の要因でもあるがん関連遺伝子KRAS遺伝子の変異が存在することを確認しました。

本研究成果により、子宮腺筋症が、高頻度に子宮内膜症を併発する機構が明らかになりました。

子宮腺筋症について

子宮腺筋症は、女性の20~30%が罹患し、高頻度に子宮内膜症を併発します。激しい月経痛や貧血のほか不妊の原因にもなります。治療は、ホルモン療法がおこなわれますが、治療効果が低い場合などは子宮を摘出することもあります。

子宮腺筋症は子宮内膜(注4)様組織が子宮筋層で増殖しますが、かつては子宮内膜様組織が卵巣や別の臓器で増殖する子宮内膜症と同一疾患として考えられていました。しかし、臨床上の特徴が異なる点も多く、現在は別の疾患として考えられています(図1)。

図1 子宮内膜症と子宮腺筋症のモデル図
近年のゲノム解析により、子宮内膜症については、がん関連遺伝子であるKRAS遺伝子に変異が入った細胞が子宮の内膜に存在することが、その起源であることが分かってきました。一方、子宮腺筋症の解析は進んでおらず、発症機構やなぜ子宮腺筋症と子宮内膜症が高頻度に併発するのか分からないままでした。

研究成果

研究グループは、子宮腺筋症の発生要因と子宮内膜症が併発する要因を調べるため、東京大学と順天堂大学の附属病院で手術を受けた子宮腺筋症患者さんについて、子宮腺筋症の病変組織、病理学的に正常な子宮内膜組織と併発子宮内膜症の病変組織のゲノム解析を行いました。

子宮腺筋症の遺伝子変異と発症機構の解析

子宮腺筋症の病変部(子宮筋層に存在する子宮内膜様組織)において、KRAS遺伝子の変異を約40%に認めました(図2上)。

また、KRAS遺伝子の変異は、子宮腺筋症のない患者さんの見かけ正常な子宮内膜組織や、併発した子宮内膜症の病変部(例:卵巣など)においても、同一のKRAS遺伝子の変異を認めました(図2下)。これらの結果から、子宮腺筋症も子宮内膜症と同様に、病気の起源となる細胞は、子宮内膜組織で発生したKRAS遺伝子変異細胞であることが明らかになりました。

子宮腺筋症のゲノム解析図2

図2 KRAS遺伝子変異が子宮腺筋症病変部と正常子宮内膜や併発子宮内膜症病変部でも検出

子宮内膜症のゲノム解析から、KRASやPIC3CA遺伝子変異が、病変部だけではなく、子宮内膜組織においても認められています。子宮腺筋症者でも、KRAS遺伝子変異が、子宮筋層中の病変部では70症例中26症例、子宮内膜組織では18症例中10症例において認められました。

子宮腺筋症に関連するKRAS遺伝子の変異と意義

子宮腺筋症のKRAS遺伝子の変異を有する患者群について臨床情報との相関性を調べたところ、子宮内膜症の併発率が高いことが示されました(表1)。
以上の結果から、子宮腺筋症と子宮内膜症は、発症機構が共有しているため、両疾患が高頻度に併発することも明らかになりました。
表1 子宮腺筋症ゲノム解析結果概要

KRAS遺伝子の変異を有する26症例中22症例(84.6%)が、子宮内膜症を併発しており、両疾患が高頻度に併発する機構の一部が明らかとなりました。

共同研究者

本研究は、以下の施設を含む、多くの研究グループによる取り組みの成果です。

また、試料提供にご協力・ご賛同してくださった患者さん・家族の皆様へも深く御礼を申し上げます。引き続き、生体試料を用いた研究に対するご理解とご支援をお願いいたします。

  1. 国立大学法人東京大学医学部附属病院 廣田泰講師、福井大和大学院生、織田克利准教授、大須賀穣教授、ほか
  2. 学校法人順天堂

医学部産婦人科学講座 寺尾泰久先任准教授、吉田惠美子非常勤助教

医学部人体病理病態学講座 林大久生准教授、齋藤剛准教授

3.  公益財団法人がん研究会

竹内賢吾部長、坂田征士特任研究員

研究への支援

国立研究開発法人日本医療研究開発機構

次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE

女性の健康の包括的支援実用化研究事業(Wise

学術振興会科学研究費助成事業

鈴木謙三記念医科学応用研究財団

発表論文

雑誌名:    Nature Communications,2019, on line publication.

タイトル:   Uterine adenomyosis is an oligoclonal disorder associated with KRAS mutations

著者:        Satoshi Inoue*, Yasushi Hirota, Toshihide Ueno, Yamato Fukui, Emiko Yoshida, Takuo Hayashi, Shinya Kojima, Reina Takeyama, Taiki Hashimoto, Tohru Kiyono, Masako Ikemura, Ayumi Taguchi, Tomoki Tanaka, Yosuke Tanaka, Seiji Sakata, Kengo Takeuchi, Ayako Muraoka, Satoko Osuka, Tsuyoshi Saito, Katsutoshi Oda, Yutaka Osuga, Yasuhisa Terao, Masahito Kawazu and Hiroyuki Mano*. (* 責任著者)

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