2020-05-27 京都大学
Jean-Michel Fustin 薬学研究科准教授(現・英マンチェスター大学研究員)、岡村均 名誉教授らの研究グループは、世界10施設の研究者とともに、メチル化反応と体内時計の生命誕生以来の密接な関係を発見しました。細菌からヒトまで、25億年以上の進化を隔てても保存されていたのです。さらに、本研究成果をヒト疾病治療に応用したところ、細菌独自のメチル化関連酵素の導入にて、ヒト細胞の代謝異常を矯正することに成功しました。
私たちの体の中では、無数の生化学反応が起こっています。その複雑なシステムを調節するため、細胞はメチル化(標的分子へのメチル基の付加)という、重要な調節機構を進化させてきました。メチル化の欠乏は、食生活や先天異常だけでなく、癌、アテローム性動脈硬化症、先天異常、老化、糖尿病、肝疾患など多くの疾病で局所的に起こる可能性が示唆されています。今回、進化の初期からメチル化反応と生体リズムは密接な関係を保って進化することを利用し、ヒト細胞でのメチル化反応の低下を、細菌が独自に持つ酵素により再プログラミングすることで、メチル化の欠乏が防止できることが明らかとなりました。
本研究成果は、2020年5月6日に、国際学術誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の概要図
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s42003-020-0942-0
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/251012
Jean-Michel Fustin, Shiqi Ye, Christin Rakers, Kensuke Kaneko, Kazuki Fukumoto, Mayu Yamano, Marijke Versteven, Ellen Grünewald, Samantha J. Cargill, T. Katherine Tamai, Yao Xu, Maria Luísa Jabbur, Rika Kojima, Melisa L. Lamberti, Kumiko Yoshioka-Kobayashi, David Whitmore, Stephanie Tammam, P. Lynne Howell, Ryoichiro Kageyama, Takuya Matsuo, Ralf Stanewsky, Diego A. Golombek, Carl Hirschie Johnson, Hideaki Kakeya, Gerben van Ooijen & Hitoshi Okamura (2020). Methylation deficiency disrupts biological rhythms from bacteria to humans. Communications Biology, 3:211.