ウイルスは、インドア派? アウトドア派?

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数学と実験の融合研究でC型肝炎ウイルスの感染戦略を解明した

2020-07-31 九州大学,京都大学,日本医療研究開発機構,科学技術振興機構

 

九州大学 大学院システム生命科学府 博士課程3年の岩波 翔也 大学院生および大学院理学研究院の岩見 真吾 准教授(京都大学 高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi) 連携研究者)は、国立感染症研究所 ウイルス第二部の渡士 幸一 主任研究官らとの共同研究により、C型肝炎ウイルス(HCV)が持つ繁栄戦略の一端を解き明かすことに成功しました。

一般に、ウイルスは感染した細胞内で自身を複製するとともに、子孫粒子となって新たな細胞に感染し増加します。つまり、ウイルスは「中に引きこもって、同一細胞内で安全に子孫を複製する」か「粒子として危険を冒して外出し、別の細胞に感染し増殖する」かの2つの戦略を持つと考えられます。しかし、細胞内・外のウイルス生活環を統一的に記述する実用的な方程式がなく、このような戦略を数値化するすべがなかったことより、ウイルス繁栄戦略の観点からは、これまで研究がなされてきませんでした。

研究グループは、代表的な2つのHCV株を例にして感染実験を実施し、得られた実験データをもとに、ウイルス生活環を数学的に表した方程式を用いて解析しました。これにより、生活環の中でウイルス粒子放出が占める比率が2つのHCV株間で2.7倍も開きがあり、「インドアウイルス」と「アウトドアウイルス」のような個性があること、前者は「増えやすさ」を示す指標の値が、後者は「伝播しやすさ」を示す指標の値が、それぞれの指標の最大となる値に近い値をとることが分かりました。このように、数学と実験を合わせたデータ分析から、ウイルスが異なる繁栄戦略を使い分けて生存していることを解明しました。

今回明らかにした2つの繁栄戦略は、持続感染するその他のウイルスにも共通している可能性があります。また、繁栄戦略を解明する研究により、ウイルスの弱点を見つけられるため、体内でのウイルス感染を制御する治療法の確立を目指します。

本研究の成果は、2020年7月31日(日本時間)に国際学術雑誌「PLOS Biology」で掲載される予定です。

本研究の一部は、JST 未来社会創造事業 探索加速型「共通基盤」領域、AMED 感染症研究革新イニシアティブ、JSPS 特別研究員奨励費の支援を受けました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Should a viral genome stay in the host cell or leave? A quantitative dynamics study of how hepatitis C virus deals with this dilemma”
DOI:10.1371/journal.pbio.3000562
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

岩見 真吾(イワミ シンゴ)
九州大学 大学院理学研究院 生物科学部門 准教授

<JST事業に関すること>

水田 寿雄(ミズタ ヒサオ)
科学技術振興機構 未来創造研究開発推進部

<AMEDの事業に関すること>

日本医療研究開発機構 疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課

<報道担当>

九州大学 広報室

京都大学 総務部 広報課 国際広報室

科学技術振興機構 広報課

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医療・健康細胞遺伝子工学
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