魚の個体数変動が堆積物中のDNA量から捉えられることを世界で初めて検証
堆積物DNAによる地球上のあらゆる大型生物の長期動態の解明に期待
2020-10-16 愛媛大学
愛媛大学 加 三千宣准教授、兵庫県立大学、神戸大学、産業技術総合研究所との共同研究グループは、環境DNA技術を駆使して大分県別府湾の過去300年前までさかのぼる海底堆積物から魚類DNAを発見し、魚の個体数変動が堆積物中のDNA量から捉えられることを世界で初めて検証することに成功しました。この成果は、Springer Nature出版誌の「Communications Biology」で2020年10月8日に公表されました。本研究で用いた堆積物DNA技術が他の地域にも適用されれば、いまだ地球上のほとんどの大型生物種でわかっていない個体群の長期動態の解明につながると期待されます。
大分県別府湾で採取された約100cmの柱状海底堆積物試料について定量PCR法により魚のDNA量を分析しました。その結果、堆積物からカタクチイワシ・マイワシ・マアジのDNAが検出され、300年前から現在までの海洋の堆積層中に魚のDNAが存在することが明らかとなりました。また、そのDNA量の時系列変化は、数十年から数百年スケールで有意な変動を示し、漁獲量変化と良い対応関係を示すことが明らかとなりました。この結果は、堆積物DNA技術が、魚の個体数の長期動態を解明する上で有効であることを示唆しています。
今後、こうした堆積物DNA技術は21世紀の大型生物モニタリングを支える有用な技術として世界中で利用されることが期待されます。さらに、過去の気候変動や人為撹乱による環境変動に対する生物の応答を詳しく調べることで、より確かな生物種の動態予測、生態系変化予測につながることが期待されます。