組織の細胞集団に潜む幹細胞のエピゲノム解析手法を開発 ~がん組織の精密プロファイリングに成功~

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2021-11-03 九州大学,東京工業大学,東京大学,がん研究会,科学技術振興機構

筋肉や肝臓といった組織は、多様な種類の細胞から構成され、異なる役割を持つ細胞同士が協調的に働くことで、その機能を実現します。組織を構成する細胞の種類は、遺伝子の組み合わせで決定され、エピゲノムがその組み合わせ方をつかさどると考えられています。これまでの組織のエピゲノム解析は、幹細胞など組織中の少数派細胞の情報が、多数派に埋もれてしまうことが課題となっていました。

九州大学 生体防御医学研究所の大川 恭行 教授、前原 一満 助教らは、一辺3ミリ 厚さ10マイクロメートル程度の小さな組織切片に含まれる少数の細胞集団から、高感度かつ高精度なエピゲノム情報を抽出する技術を発表しました。この技術は、これまで同グループが発表してきた「クロマチン挿入標識(Chromatin Integration Labeling:ChIL)法(ChIL-seq)」を基礎として、今回さらに組織をターゲットとした解析法を開発しました。

本研究グループは、高感度なChIL-seqの技術と、遺伝子発現をつかさどる分子の移動度を評価する統計モデルを組み合わせ、埋もれた幹細胞の活性化情報を検出する新たな解析技術を開発しました。さらに本技術は、さまざまなステージの乳がん組織のプロファイリングに有用であることも示しました。この解析技術を使うことで、組織再生や再生医療の応用に必要な幹細胞や、組成が多様ながん組織などの詳細なメカニズムの解明が期待されます。

本研究は、東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター(木村 宏 教授ら)、東京大学 定量生命科学研究所(胡桃坂 仁志 教授ら)、がん研究会 がん研究所(斉藤 典子 部長ら)の研究グループとの共同研究で行われました。

本研究成果は、2021年11月3日(水)(中央ヨーロッパ時間)に欧州科学雑誌「Molecular Systems Biology」で公開される予定です。

本研究の成果は、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ 研究領域「数学と情報科学で解き明かす多様な対象の数理構造と活用」における研究課題「生命現象の定性的理解を支援するデータ解析技術の創出 JPMJPR2026(研究代表者:前原 一満)」、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST 研究領域「統合1 細胞解析のための革新的技術基盤」における研究課題「細胞ポテンシャル測定システムの開発 JPMJCR16G1(研究代表者:大川 恭行)」、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ 研究領域「ゲノムスケールのDNA設計・合成による細胞制御技術の創出」における研究課題「組織特異的ゲノム構造の再構築技術の開発JPMJPR19K7(研究代表者:原田 哲仁)」、文部科学省 科学研究費 新学術領域研究「クロマチン潜在能JP18H05527(領域代表者:木村 宏)」、日本学術振興会 科学研究費(JP19H04970、JP19H03158、JP20H05393、JP18K19432、JP19H03211、JP19H05425、JP20H05368、JP18H05534、JP20H00449、JP18H04802、JP18H05527、JP19H05244、JP17H03608、JP20H00456、JP20H04846、JP18H05527、JP17H01417)、日本医療研究開発機構 研究費(JP19am0101076、JP20am0101076、JP19am0101105、JP20ek0109489h0001)、九州大学 情報基盤研究開発センター研究用計算機システム 重点支援制度、九州大学 生体防御医学研究所 共同利用・共同研究などの支援により得られたものです。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Modeling population size independent tissue epigenomes by ChIL-seq with single thin sections”
DOI:10.15252/msb.202110323
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
大川 恭行(オオカワ ヤスユキ)
九州大学 生体防御医学研究所 教授

<JST事業に関すること>
舘澤 博子(タテサワ ヒロコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ

<報道担当>
九州大学 広報室
東京工業大学 総務部 広報課
東京大学 定量生命科学研究所 総務チーム
がん研究会 広報課
科学技術振興機構 広報課

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細胞遺伝子工学
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