2025-01-31 愛媛大学
議論が続いている六脚類(広義の昆虫類)の初期分岐に関して、新たな系統仮説「カマアシムシ類-姉妹群仮説」が提出されました。本研究ではこの議論を詳細に検討し、この仮説が大きな誤謬の元にもたらされたことを明らかにし、従来から提案されている「欠尾類-有尾類仮説」の妥当性を主張しました。
この研究には、愛媛大学大学院理工学研究科の福井眞生子准教授が参画しています。
(Filientomon takanawanum, photo by Makiko Fukui)
研究の概要
六脚類(広義の昆虫類)は全動物種の75%を占める巨大生物群ですが、その系統進化については100年以上の間、議論が続いており、進化初期に起こった初期分岐、すなわち、「カマアシムシ類」、「トビムシ類」、「コムシ類」、そしてこれら3群以外のすべての六脚類を含む「昆虫類(狭義)」の4群の系統関係さえコンセンサスが得られていませんでした。このような中、遺伝子の塩基配列などの膨大なデータセットに基づく客観的な分子系統解析が進められ、六脚類の初期分岐は「欠尾類(=カマアシムシ類+トビムシ類)+有尾類(=コムシ類+昆虫類)」(「欠尾類-有尾類仮説」)との理解が定説となりました。
ところが、最近、これとは異なる「カマアシムシ類-姉妹群仮説」(「カマアシムシ類+[(トビムシ類+コムシ類)+昆虫類]」)が分子系統解析により提出され、大きく注目されました。しかしながら本研究では、この仮説のサポートとして用いられた塩基配列以外の情報を検証したところ、情報の理解の誤りや、不十分な調査により、間違った論理展開が行われていたことが分かりました。
論文情報
題名:Embryology cannot establish the “Protura-sister”.
(和訳)発生学は「カマアシムシ類-姉妹群仮説」を認めない
著者:R. Machida, M. Fukui, S. Tomizuka, Y. Ikeda, K. Sekiya, and M. Masumoto
掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
掲載日:2025年1月29日
DOI:10.1073/pnas.2423813122
本件に関する問い合わせ先
愛媛大学大学院理工学研究科
福井 眞生子