ヒト表皮細胞の分化と皮膚バリア機能の調節機構を解明~アトピー性皮膚炎の新たな治療戦略へ向けて~

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2018-11-16 京都大学

成宮周 名誉教授(医学研究科特任教授)、タムケオ・ディーン 医学研究科特定准教授、住友明子 同特定研究員(現・トロント大学博士研究員)らの研究グループは、ヒト表皮細胞において、皮膚バリア機能・保湿機能を担う重要なタンパク質であるフィラグリンの発現を誘導する内因性物質として、生理活性脂質であるリゾホスファチジン酸 (LPA)を同定しました。

また、網羅的遺伝子発現解析を行い、LPAはフィラグリン遺伝子を含む皮膚バリア機能に重要な役割を果たす一群の遺伝子の発現を広範に誘導すること、この作用はRho-Rock-SRFシグナル伝達経路を介することを明らかにしました。

さらに、皮膚バリア機能低下のモデルマウスを用いて、LPAがフィラグリンの発現上昇により皮膚バリア機能・保湿機能を改善することを確認しました。これらの結果は、アトピー性皮膚炎に代表される皮膚バリア機能低下を呈する病態の治療開発に応用できることが期待されます。

本研究成果は、2018年11月14日に、米国の科学雑誌「Journal of Investigative Dermatology」に掲載されました。

図:ヒト表皮細胞の分化におけるLPAの働く分子メカニズム(モデル)

書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1016/j.jid.2018.10.034

Akiko Sumitomo, Ratklao Siriwach, Dean Thumkeo, Kentaro Ito, Ryota Nakagawa, Nobuo Tanaka, Kohei Tanabe, Akira Watanabe, Mari Kishibe, Akemi Ishida-Yamamoto, Tetsuya Honda, Kenji Kabashima, Junken Aoki, Shuh Narumiya (2018). LPA induces keratinocyte differentiation and promotes skin barrier function through the LPAR1/LPAR5-RHO-ROCK-SRF axis. Journal of Investigative Dermatology.

詳しい研究内容について

ヒト表皮細胞の分化と皮膚バリア機能の調節機構を解明
—アトピー性皮膚炎の新たな治療戦略へ向けて—
概要
京都大学大学院医学研究科創薬医学講座の成宮周 特任教授 京都大学名誉教授)、タムケオ・ディーン 同 特定准教授、及び住友明子 同特定研究員 研究当時、 現:トロント大学薬物依存・精神衛生センター博士研 究員)らの研究グループは、ヒト表皮細胞において、 皮膚バリア機能・保湿機能を担う重要なタンパク質で あるフィラグリンの発現を誘導する内因性物質とし て、生理活性脂質であるリゾホスファチジン酸 (LPA) を同定しました。また、網羅的遺伝子発現解析を行い、 LPAはフィラグリン遺伝子を含む皮膚バリア機能に重 要な役割を果たす一群の遺伝子の発現を広範に誘導す ること、この作用は Rho-Rock-SRF シグナル伝達経路 を介することを明らかにしました。さらに、皮膚バリ ア機能低下のモデルマウスを用いて、LPA がフィラグ リンの発現上昇により皮膚バリア機能・保湿機能を改 善することを確認しました。これらの結果は、アトピ ー性皮膚炎に代表される皮膚バリア機能低下を呈する 病態の治療開発に応用できることが期待されます。近年、アトピー性皮膚炎に対し、その背景にある炎 症反応の上昇を免疫抑制作用のある薬剤で低下させる 治療法が開発されました。これに対し、LPA の作用は フィラグリン及び皮膚バリア機能関連分子群の発現を 強力に誘導し、炎症によって障害を受けた皮膚バリア 機能を改善させることで、より効果的な治療戦略とな る可能性があります。本研究成果は、2018 年 11 月 14 日に米国の科学雑 誌「Journal of Investigative Dermatology」に掲載さ れました。

図 ヒト表皮細胞の分化における LPA の働く分子メ カニズム モデル)
1.背景
皮膚の主な機能は外部環境からの病原体やアレルゲン、その他の有害物質の侵入を防ぐと共に生体内部から の水分蒸発を最小限にするバリア機能であり、フィラグリンはそのバリア機能に重要な役割を果たしています。 フィラグリンは、表皮の顆粒細胞で産生される塩基性タンパク質の一種であり、ケラチンとの重合により皮膚 の角質層において重要なバリア構造体を形成すると共に、角質上層において最終的にアミノ酸などの低分子ま で分解されることにより皮膚の保湿機能を担うことがわかっています。近年、フィラグリン遺伝子の変異が皮膚バリア機能の破綻をもたらしアトピー性皮膚炎発症につながること、 また、アトピー性皮膚炎の多くの症例においてフィラグリン発現の低下が観察されることが報告され、フィラ グリン発現の促進によるアトピー性皮膚炎の発症予防と治療の可能性が示唆されてきました。しかし、フィラ グリンの詳細な発現制御メカニズムに関する知見は乏しく、フィラグリンの発現を活性化する内因性物質は不 明でした。従って、本研究では、ヒト表皮細胞でのフィラグリン発現の発現促進物質の同定とその物質の働く 分子メカニズムの解明を試みました。
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