大脳皮質ニューロンが適切な場所で移動を停止するしくみ

ad

2019-11-18 国立遺伝学研究所

Semaphorin 6A¬–Plexin A2/A4 interactions with radial glia regulate migration termination of superficial layer cortical neurons.

Yumiko Hatanaka, Takahiro Kawasaki, Takaya Abe, Go Shioi, Takao Kohno, Mitsuharu Hattori, Akira Sakakibara, Yasuo Kawaguchi & Tatsumi Hirata

iScience 21, pp 359-374, 2019 DOI:10.1016/j.isci.2019.10.034

中枢神経系では、多くのニューロンが脳室に面した場所で生まれたのち、最終目的地まで移動します。大脳皮質においても脳室帯で生まれたニューロンは、ラジアルグリア細胞の突起をガイドとして、脳表面に向かって移動することが知られています。機能的な脳構造を作るためには、これら移動ニューロンが適切な位置で停止することが必要ですが、そのメカニズムについてはよくわかっていませんでした。私たちはセマフォリン(Sema)ファミリーの受容体として知られるプレキシン(Plxn)A2とA4のダブルノックアウト(dKO)マウスを解析する過程で、大脳皮質の最表層を占めるニューロンが適切な位置を超え、第1層に侵入するということを見出しました。野生型マウスではPlxnA2/A4はこれら移動ニューロンの先導突起上に発現しており、PlxnA2を使ったレスキュー実験により、これら分子の発現が移動停止に必要であることを確認しました。一方PlxnA2/A4のリガンドであるSema6A分子はラジアルグリア細胞に発現しており、ラジアルグリア細胞のSema6A遺伝子をノックアウトするとニューロンは第1層へと侵入しました。これまでの研究から、PlxnA2/A4とSema6Aの相互作用は反発活性を引き起こすことが知られています。以上の結果から、最表層のニューロンはラジアルグリアの突起をガイドとして移動したのち、ニューロン上のPlxnA2/A4と突起上のSema6Aが相互作用することにより突起を離れ、そこで移動を終了するという新しい分子メカニズムが考えられました。

Figure1

図:大脳皮質のニューロンはラジアルグリア細胞の突起をガイドとして表層方向へ移動します。最表層ニューロンの停止過程では、ニューロンに発現しているPlxnA2/A4とラジアルグリア細胞上のSema6Aの相互作用により、辺縁帯(将来の第1層)の直下で移動を停止すると考えらます。どちらかの遺伝子が欠損するとこれらニューロンは第1層に侵入し、大脳皮質ニューロンの配置が乱れます。

本研究は畠中由美子(大阪大学生命機能研究科助教)と川崎能彦(遺伝学研究所助教)が中心となって行ったものであり大阪大学生命機能研究科、国立遺伝学研究所、理化学研究所、名古屋市立大学、中部大学、生理学研究所の共同研究として行われました。

NIG-JOINT Collaboration Research Grants 2013-A, 2017-A

ad

医療・健康細胞遺伝子工学生物化学工学
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました