精子形成の新しいメカニズムを解明 〜tRNAの化学修飾が鍵〜

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2024-09-25 国立遺伝学研究所

tRNAの化学修飾は特定の酵素により決まった位置のヌクレオチドに導かれることで、tRNAの機能を制御し、正常なタンパク質合成を実現します。本研究では、ショウジョウバエ個体においてRNA修飾酵素Mettl1(Methyltransferase-like 1)がm7G46(tRNA 46位のN7-メチルグアノシン)という化学修飾を特定のtRNAに導くことで精子形成に必要なタンパク質の合成を進める新たなメカニズムを発見しました。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の金子隼也 総合研究大学院大学 大学院生(現 国立遺伝学研究所 特任研究員)、三好啓太 助教、近藤周 助教(現 東京理科大学 准教授)、齋藤都暁 教授らの研究グループは戸室幸太郎 大学院生リサーチアソシエイト(理化学研究所 開発研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室)、岩崎信太郎 主任研究員(理化学研究所 開発研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室)らの研究グループと共同で、m7G46修飾を持たないショウジョウバエの変異体を用いて、精巣でのタンパク質合成をリボソームプロファイリングという手法を駆使して測定しました。その結果、m7G46が失われると、雄性の配偶子である精子形成において重要な遺伝子のタンパク質合成が止まり、精子形成が破綻してしまうことを発見しました。(図)

tRNA修飾の異常はがん、脳・神経疾患、などの原因となることが報告されており、m7G46もその例外ではありません。本研究は、m7G46の異常が引き起こす病気の理解に貢献することが期待されます。

本研究成果は、情報システム研究機構 国立遺伝学研究所・無脊椎動物遺伝研究室(金子隼也 総研大大学院生[現 国立遺伝学研究所 特任研究員]、三好啓太 助教、近藤周 助教 [現 東京理科大学 准教授]、齋藤都暁 教授)、理化学研究所 開発研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室(戸室幸太郎 大学院生リサーチアソシエイト、岩崎信太郎 主任研究員)との共同研究成果です。

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(JP18H02379, JP16H06279, JP23H02415, JP22H02669)、武田科学振興財団、山田科学財団、内藤科学技術財団、上原記念財団、AMED(JP20gm1410001)、熊本大学発達医療研究センター、及び、高深度オミクス共同利用・共同研究拠点(IMEG)のプログラムにより支援されました。

本研究は、2024年9月24日に「Nature Communications」にオープンアクセスとしてオンライン出版されました。

精子形成の新しいメカニズムを解明 〜tRNAの化学修飾が鍵〜図: キイロショウジョウバエの精巣では生殖幹細胞が4回の有糸分裂を経て精原細胞となったのち、精母細胞が作られる。精母細胞は2回の減数分裂を繰り返して精子細胞となり、分離、伸長の過程を経て成熟した精子となる。作られた精子は貯精嚢に蓄えられている(野生型 左図)。一方でMettl1変異体では、精巣内で精子細胞の存在は確認されたものの、分離、伸長した精子細胞は見られなかった(Mettl1変異体 右図)。これは、精子の分離、伸長に関連するタンパク質が合成されなくなったことによるものであると考えられる。


Mettl1-dependent m7G tRNA modification is essential for maintaining spermatogenesis and fertility in Drosophila melanogaster

Shunya Kaneko, Keita Miyoshi, Kotaro Tomuro, Makoto Terauchi, Ryoya Tanaka, Shu Kondo, Naoki Tani, Kei-Ichiro Ishiguro, Atsushi Toyoda, Azusa Kamikouchi, Hideki Noguchi, Shintaro Iwasaki, and Kuniaki Saito

Nature Communications (2024) 15,  8147 DOI:10.1038/s41467-024-52389-0

プレスリリース資料

 

細胞遺伝子工学
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