進化のミッシングリンクを埋める単純なDNA複製機構を進化実験により発見

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2020-06-17 東京大学

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の岡内宏樹大学院生、市橋伯一教授、大阪大学大学院情報科学研究科の酒谷佳寛大学院生(研究当時)らは、原始的なDNA複製の可能性がある新しいDNA複製のしくみを発見しました。

生物において、すべての情報を記録しているゲノムDNAの複製は最も重要なしくみの一つです。それゆえにDNAの複製は、どんな生物でも多数のタンパク質が必要とされる複雑な反応となっています。しかし、このような複雑なDNA複製機構が初めから存在していたわけでありません。原始の生命体は、そのゲノム情報をRNA(注1)に記録しており、どこかの段階でDNAに記録するように進化したと考えられています。このときに最初に生まれたDNA複製はずっと単純なしくみだったと予想されます。しかし、そのような単純なDNA複製のしくみはもはや現存生物には残っておらず、DNAの進化過程は謎に包まれていました。本研究では、この失われたDNA複製の候補となる単純な(わずか1つのタンパク質しか必要としない)DNA複製のしくみを、試験管内での進化実験により発見しました。この研究成果は、進化のミッシングリンク(注2)を埋め、DNA複製の誕生過程を理解する鍵となります。

用語解説:
注1: RNA
リボ核酸を指す。DNA(デオキシリボ核酸)に比べて酸素原子が一つ多い。原始生物はもともとRNAに遺伝情報を記録しており、どこかの段階でDNAを使い始めたと考えられている。
注2: 進化のミッシングリンク
通常は、過去に存在したはずなのにまだ見つかっていない(あるいは失われた)進化途中の生物や化石のことを指すが、ここでは過去に存在したはずなのにまだ見つかっていない(あるいは失われた)進化途中のDNA複製のしくみを指す。

詳しい資料は≫

論文情報

Hiroki Okauchi, Yoshihiro Sakatani, Kensuke Otsuka, and Norikazu Ichihashi*, “Minimization of elements for isothermal DNA replication by an evolutionary approach,” ACS Synthetic Biology: 2020年6月17日, doi:10.1021/acssynbio.0c00137.

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細胞遺伝子工学
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