フェムトリポソームが拓く革新的1分子定量解析

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微小かつ均一なリポソームの作製とデジタルバイオ分析への応用

2020-08-31 東京大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 研究室独自の微細加工デバイスを用いて、堅牢でハイスループットなリポソーム作製技術を開発しました。
  • 本技術で作製したリポソーム(フェムトリポソーム)は、微小かつ均一であり、デジタルバイオ分析用のプラットフォームとして極めて有望です。
  • このフェムトリポソームを作製したことで、膜輸送タンパク質の活性の1分子デジタル計測や1分子DNAからの無細胞デジタル遺伝子発現に成功しました。

東京大学 大学院工学系研究科の野地 博行 教授らのグループは、独自のマイクロアレイデバイス技術を用いた革新的なデジタルバイオ分析法を開発し、これまでに世界最高感度のデジタルELISA法やデジタルインフルエンザウイルス検出法などを発表してきました。このデジタルバイオ分析法は、1分子レベルの超高感度なバイオ分析法として近年注目されており、多数の研究者の参入によりその適応範囲が大きく展開されています。しかしながら、この手法の対象は水溶性タンパク質が主で、膜タンパク質への応用は限られていました。膜タンパク質活性計測のツールとしてはリポソームが良く用いられており、リポソームを用いたデジタルバイオ分析の手法が期待されていますが、従来のリポソーム作製法は粒子径や均一性に問題があり、膜タンパク質の定量的なデジタルバイオ分析に使用することは困難でした。今回、本研究グループは、デジタルバイオ分析用のプラットフォームとして利用可能な、微小かつ均一なリポソーム(フェムトリポソーム)の堅牢でハイスループットな作製技術を開発しました。そして、このフェムトリポソームを用いて、膜輸送タンパク質の定量的デジタルバイオ分析を実現し、フェムトリポソームが膜タンパク質のデジタルバイオ分析のプラットフォームとして極めて有望であることを実証しました。さらに、フェムトリポソーム内に無細胞タンパク質発現系(PURE system)を封入し、1分子DNAからのタンパク質のデジタル遺伝子発現を実現することにも成功したことから、今後、デジタルバイオ分析に加え、人工細胞創生の基礎研究やバイオ分子生産の実用化に向けたプラットフォーム技術として広範にわたる応用が期待されます。

本研究成果は、2020年8月30日(米国東部夏時間)に米国科学誌「ACS Nano」オンライン版に掲載されました。

本研究は、以下の事業の支援を受けて実施しました。

科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST

研究領域:「ゲノムスケールのDNA設計・合成による細胞制御技術の創出」(研究総括:塩見 春彦)

研究課題:「長鎖DNA合成と自律型人工細胞創出のための人工細胞リアクタシステム」(研究代表者:野地 博行)

日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究(S)

研究課題:「on-chip型人工細胞リアクタによる次世代型デジタルバイオアッセイの開発」(研究代表者:野地 博行)

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Monodisperse Liposomes with Femtoliter Volume Enable Quantitative Digital Bioassays of Membrane Transporters and Cell-Free Gene Expression”
DOI:10.1021/acsnano.0c04354
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

野地 博行(ノジ ヒロユキ)
東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻 教授

<JST事業に関すること>

保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ

<報道担当>

東京大学 大学院工学系研究科 広報室
科学技術振興機構 広報課

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生物工学一般細胞遺伝子工学
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