半数体生物の性染色体上の性決定遺伝子を解明 ~コケがもつ現生生物最古の起源の性染色体~

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2021-11-08  国立遺伝学研究所

半数体生物の性染色体上の性決定遺伝子を解明 ~コケがもつ現生生物最古の起源の性染色体~

京都大学大学院生命科学研究科の岩崎美雪氏(博士後期課程学生)、梶原智明氏(博士後期課程学生)、安居佑季子准教授、吉竹良洋助教、山岡尚平准教授、河内孝之教授らの研究グループは、東京理科大学理工学部応用生物科学科の西浜竜一教授、朽津和幸教授、国立遺伝学研究所中村保一教授、近畿大学生物理工学部大和勝幸教授らの研究グループおよびオーストリア・ドイツ・オーストラリアの研究グループとの国際共同研究により、半数体において性別が決まるコケ植物のゼニゴケから性決定遺伝子を同定しました。

性染色体と性決定因子の研究は二倍体生物(例えばXYがオス、XXがメスになる哺乳類)で進んでいますが、遺伝的な振る舞いが大きく異なる半数体生物における性染色体上の性決定遺伝子は不明でした。今回、生活環の大半を半数体で過ごす苔類ゼニゴケのメスの性染色体の一次構造を染色体レベルで明らかにし、更にメスの性染色体上の遺伝子機能解析の実験から雌性化遺伝子(フェミナイザー)を同定しました。フェミナイザーはオスのゼニゴケをメスに転換する能力をもちます。更に、この遺伝子は有性生殖を誘導する役割も有しており、この機能はオスの性染色体に存在する相同遺伝子と共通していました。これは二倍体生物の性決定遺伝子が性決定に特化した機能をもつこととは対照的です。また、今回同定したフェミナイザー遺伝子はこれまでに知られるどの性決定遺伝子よりも起源が古く、苔類が地球に出現した4億3000万年前に性染色体が誕生していたことを示しました。

本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(S)(17H07424、代表河内孝之)、日本学術振興会 二国間交流事業 二国間共同研究(JSBP120192003、代表河内孝之)、先進ゲノム支援(16H06279)等により支援されました。

本成果は2021年11月3日に国際誌「Current Biology」にオンライン掲載されました。

遺伝研の貢献
中村研究室では谷澤靖洋助教が中心となって、ゼニゴケのメス株・特に今回の発見にとって重要なU染色体を対象として、遺伝研スパコンによる高精度な遺伝子の解析を実施しました。解析結果は遺伝研で開発されたゼニゴケゲノムデータベース Marpolbase 上で広く公開します

Figure1

図: 今回の研究のイメージ図
ゼニゴケは性染色体をもつ雌雄異株植物である。今回は、メス性染色体上の性決定遺伝子フェミナイザーBPCUを同定した。この遺伝子はメスとしての性分化を誘導する。予想外なことにオス性染色体に相同遺伝子BPCVが存在し、BPCUとBPCVは共に、生殖成長の誘導機能を持っていた。

Identification of the sex-determining factor in the liverwort Marchantia polymorpha> reveals unique evolution of sex chromosomes in a haploid system

M. Iwasaki, T. Kajiwara, Y. Yasui, Y. Yoshitake, M. Miyazaki, S. Kawamura, N. Suetsugu, R. Nishihama, S. Yamaoka, D. Wanke, K. Hashimoto, K. Kuchitsu, S. A. Montgomery, S. Singh, Y. Tanizawa, M. Yagura, T. Mochizuki, M. Sakamoto, Y. Nakamura, C. Liu, F. Berger, K. T. Yamato, J. L. Bowman, T. Kohchi

Current Biology 2021 November 03 DOI:10.1016/j.cub.2021.10.023

詳しい資料は≫

細胞遺伝子工学
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