抗体のクラススイッチを制御し微生物感染から 生体を防御する分子の発見 ~感染症や免疫難病に対する治療法開発への手がかりに~

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2022-08-25 徳島大学,科学技術振興機構

抗体のクラススイッチを制御し微生物感染から 生体を防御する分子の発見 ~感染症や免疫難病に対する治療法開発への手がかりに~

徳島大学 大学院医歯薬学研究部・生体防御医学分野の九十九 伸一 助教、安友 康二 教授、モントリオール大学のJavier M Di Noia 教授、岐阜大学の前川 洋一 教授、滋賀医科大学の伊藤 靖 教授、東京大学の太田 峰人 特任助教、藤尾 圭志 教授らの研究チームは、遺伝学的な解析から自己免疫疾患との関連が示唆されながら機能未知であったAFF3遺伝子が、抗体のクラススイッチを促進し、微生物感染から生体を防御する役割を持つことを明らかにしました。

Genome-wide association studies(GWAS)は、遺伝的な多型を手掛かりに、さまざまな疾患や形質がどのような遺伝子と関連しているかを探索する研究手法です。GWASによって疾患に関連している可能性がある多くの候補遺伝子が報告されている一方で、各候補遺伝子がどのような機能を持っているかについて未知な場合も多く、これがGWASの知見を治療や予防に生かすための妨げのひとつとなっています。

本研究では、複数の自己免疫疾患で共通する候補遺伝子をGWASのデータベースから選び、その中から機能が未知であり、発現様式が免疫細胞に比較的限局している遺伝子としてAFF3を抽出しました。AFF3分子の機能を知るために、Aff3遺伝子欠損マウスを作製・解析し、その免疫応答における役割について調べました。その結果、AFF3分子はリンパ球の一種であるB細胞において抗体のクラススイッチを促進する機能を持つことを発見しました。また、AFF3分子が欠損することにより寄生虫感染やウイルス感染に対する抗体価が著明に低下することも見いだしました。ヒトにおいても、AFF3の発現と抗体遺伝子であるIGHG2、IGHA2のmRNA発現量が相関することも明らかにしました。本研究の結果は、AFF3は抗体のクラススイッチを制御することで自己免疫疾患の病的な自己抗体や、微生物に対する感染抵抗性に関わる抗体量を決める重要な分子であることを示唆しています。今後、感染症や免疫難病に対してAFF3を制御することによる薬剤開発が期待されます。

本研究成果は、2022年8月24日(米国東部時間)公開の「Science Advances」誌に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業 ウイルス-人体相互作用ネットワークの理解と制御(プロジェクトマネージャー(PM) 松浦 善治 JPMJMS2025、課題推進者 安友 康二)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究C(研究代表者 九十九 伸一 JP18K08388)、Canadian Institute of Health Research(研究代表者 Javier M. Di Noia PJ-155944) などの支援を一部受けて実施されました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“AFF3, a susceptibility factor for autoimmune diseases, is a molecular facilitator of immunoglobulin class switch recombination”
DOI:10.1126/sciadv.abq0008
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
安友 康二(ヤストモ コウジ)
徳島大学 大学院医歯薬学研究部 医学域生体防御医学分野 教授

九十九 伸一(ツクモ シンイチ)
徳島大学 大学院医歯薬学研究部 医学域生体防御医学分野 助教

<JST事業に関すること>
犬飼 孔(イヌカイ コウ)
科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部

<報道担当>
徳島大学 蔵本事務部 医学部総務課 総務係
科学技術振興機構 広報課

細胞遺伝子工学
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