2023-06-20 筑波大学
雑種強勢は、異なる種あるいは系統を掛け合わせてできたF1雑種が、その両親よりも旺盛な生育を示す生命現象です。今現在流通している多くの農作物においても、これを利用したF1品種が栽培されています。しかしながら、雑種強勢という現象は100年以上前から知られているものの、未だにそのメカニズムについての全容解明には至っていません。
本研究では、モデル植物であるシロイヌナズナ202系統を材料に、開花時期、種子サイズ、種子発芽時期、発芽後15日目の生重量に関する表現型解析に基づいて、雑種強勢の表現型発現レベルごとにグループ分けをしました。雑種強勢の発現レベルが高い交配組み合わせと低い交配組み合わせを比較解析した結果、高いレベルの雑種強勢を示す交配組み合わせにおいては、特異的にTCAサイクル(ミトコンドリア内での炭素代謝回路)の中間代謝物の産生量が変化することを明らかにしました。 雑種強勢の分子メカニズムを解明することで、効率的なF1育種法の確立や高バイオマス作物の開発等に貢献することが期待されます。
PDF資料
研究代表者
筑波大学生命環境系
柴 博史 教授
横浜市立大学木原生物学研究所
杉 直也 特任助教
筑波大学生命環境系/理化学研究所環境資源科学研究センター
草野 都 教授
東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻
鈴木 穣 教授
掲載論文
- 【題名】
- Morphological and metabolomics profiling of intraspecific Arabidopsis hybrids in relation to biomass heterosis. (バイオマス増加に関連したシロイヌナズナ種内雑種の表現型および代謝プロファイリング)
- 【掲載誌】
- Scientific reports
- 【DOI】
- 10.1038/s41598-023-36618-y