環境DNA分析に基づく新しい系統地理調査~バケツ一杯の水から魚の地域分化を解明~

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2023-03-08 京都大学

辻冴月 理学研究科日本学術振興会特別研究員PD、渡辺勝敏 同准教授、芝田直樹 株式会社環境総合リサーチ(研究当時、現:タカラバイオ株式会社)、乾隆帝 福岡工業大学教授、中尾遼平 山口大学特命准教授、赤松良久 同教授らの研究グループは、環境水に含まれる生物由来のDNA(環境DNA)を分析するだけで、複数種の系統地理を同時に推定することができる新手法の開発に成功しました。

生物種内における遺伝的な地域性や系統分化は、種の分布や進化の過程を推測するための重要な手がかりです。しかし、この遺伝的な違いを調べる系統地理調査は多地点から対象種を多数個体捕獲し、組織DNAを個別に分析する必要があるため、多大な労力や時間を要します。そこで本研究では、環境水に含まれる環境DNAから効率的に正確な系統地理情報を取得する手法の開発を試みました。最大の課題であった偽陽性配列(実験の途中で必ず生じる本来存在しない配列)の除去のための効果的なデータスクリーニング方法を考案、適用した結果、対象とした淡水魚5種すべてについて、一般的な捕獲調査と同様の地域分化パターン(遺伝的集団構造)の情報を得ることに成功しました。本手法は、これまでにない簡便かつ効率的、非侵襲的な調査を実現し、系統地理研究を通じた生物多様性の理解に大きく貢献することが期待されます。

本研究成果は、2023年3月7日に、国際学術誌「Molecular Ecology Resources」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント
「本研究の野外調査中は各地点で水を汲んでまわるだけのドライブなので、自身が系統地理を調べていることを忘れてしまうほどでした。しかし、解析が進むにつれ、各種の地域分化の状況がくっきりと浮かび上がってきたときはとても興奮したのを覚えています。今後も、各地域で息づいてきた生物たちを遺伝子レベルで把握・保全することに貢献するとともに、それらの辿ってきた歴史を解明していくことを目指したいと思います。」(辻冴月)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:渡辺 勝敏

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生物環境工学
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