強い日差しに対応して葉がその厚さを変える仕組みを解明~二段構えで強い日差しに適応!~

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2019-08-23 東京大学

東京大学大学院理学系研究科の星野里奈大学院生(当時)をはじめとする塚谷裕一教授らのグループはこのたび、強い、照りつけるような日差しに対して、葉がどのようにその中の構造を変えて適応しているのかを、明らかにしました。

植物の葉は光合成をすることがその大事な役割です。そのため、常に太陽の光を浴びることになりますが、弱い光の場合と強い光の場合とでは、光を吸収するのに適した葉の厚さは当然異なります。そのため古くから、植物は光の強度に合わせて葉の厚さを変化させることが知られていました。

今回塚谷研究室のグループは、モデル植物であるシロイヌナズナを使って、その葉の厚さがどういうステップを踏んで決まるのか、解明に取り組みました。シロイヌナズナの葉は、できあがるまでの初期段階では大変小さく、通常の観察方法では真っ直ぐ垂直な断面を見ることすら困難です。これを今回、顕微鏡技術を工夫することで解決し、時系列で詳細に観察することに成功しました。その結果、強い日差しに適応した厚さを持つ葉(陽葉といいます)では、まず最初、細胞が葉の厚さ方向に伸びること、そしてそれが二層に分裂することで厚さが増すこと、そしてそれは青い光の成分で促進されることが明らかになりました。さらに後半の過程では、光の量に関わりなく細胞が肥大して厚さが増すこと、そしてそれは供給される糖の量でコントロールされていることが判明しました。

植物によっては光の量に応じてこうした厚さの変化をするのが得意で融通が利く種類と、そうでない種類があります。地球上の植物群落の多様性の少なくとも一部は、それによって生み出されています。光環境に対して融通の利きにくい種類は、人が栽培をする際、光の量を適切に保ってやらなければならず、管理に手間がかかります。今後、こうした葉における融通の効かせ方の仕組みがさらに正確に分かってくれば、種類ごとの光環境に対する個性の理解が深まり、環境保護の方策に大きく役立つと思われます。ひいては作物の管理にも将来的に役立つと期待されます。

「夏の日差しは人にとっても大変やっかいなものです。植物は光合成で暮らしているため、それでもしっかり受け止めてエネルギーとしなくてはいけません。今まで葉がどうやってそういうときに厚さを変えて対処しているのか、正確なところが分かっていませんでした」と塚谷教授は話します。「今回、そのプロセスが思ったより複雑で、二段構えであることが分かり、また大事なポイントとそうでないポイントがハッキリしたことで、今後の解明に勢いが付いたと思います」と続けます。

論文情報

Rina Hoshino, Yuki Yoshida, Hirokazu Tsukaya, “Multiple steps of leaf thickening during sun‐leaf formation in Arabidopsis,” The Plant Journal: 2019年7月26日, doi:https://doi.org/10.1111/tpj.14467.

論文へのリンク (掲載誌)

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