2019-01-29 国立遺伝学研究所
ES-mediated chimera analysis revealed requirement of DDX6 for NANOS2 localization and function in mouse germ cells
Ryuki Shimada, Makoto Kiso, Yumiko Saga
Scientific Report 9, Article number: 515 (2019) DOI:10.1038/s41598-018-36502-0
時期・組織特異的な遺伝子の機能解析に、マウスではCre-loxpシステムがよく利用されています。通常、このためには、時期・組織特異的なCreリコンビナーゼを持つマウスと目的の遺伝子がloxp配列ではさまれたマウスを作成し、それぞれを交配する必要がありました。そのため、マウスの準備に1年以上の時間が必要でした。今回我々は、遺伝子編集をしたES細胞を使ったキメラマウスの作成を利用することで、マウスの掛け合わせなしに遺伝子の時期・組織特異的な機能解析を可能にしました。
我々は生殖細胞で発現する誘導型CreとCreの発現に応答してGFPを発現するレポーター遺伝子をもつES細胞を樹立しました。このES細胞にゲノム編集技術を用いてDdx6遺伝子をloxp配列ではさんだES細胞を作成しキメラ解析を行いました。DDX6はRNAの転写後制御に重要であると考えられています。生殖細胞のオス分化はNANOS2を介したRNA制御が重要であることから、オス生殖細胞分化におけるDDX6の機能解析を行いました。その結果、DDX6は生殖細胞の分化においてNANOS2を介したRNA制御に必須であることが生体内で確認できました。本研究では時期・組織特異的なKOを簡便に行うことを可能にし、細胞質顆粒の生殖細胞分化における重要性を示しました。本研究は科学研究費補助金新学術領域研究「生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御」及び「先進ゲノム支援」の支援を受けて行われました。また筆頭著者の島田龍輝は総研大の学生です。
図:(a) キメラを用いたcKO法の概略。 (b) キメラマウスの例。生殖細胞でのみCreが活性化し、GFPが生殖細胞でPositiveになっている。 (c) NANOS2が生殖細胞分化を制御するモデル。NANOS2は相互作用因子と共にtarget RNAに結合しP-bodyにリクルートする。DDX6によって形成されたP-bodyでNANOS2のtarget RNAが抑制され、生殖細胞のオス化が誘導され、細胞周期が抑制される。