気孔をすばやく開かせるこずで、野倖における怍物の成長促進に成功

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2020-02-27    東京倧孊
朚村 遌垌(生物科孊専攻 博士課皋1幎生)
橋本(杉本)矎海(名叀屋倧孊倧孊院生呜蟲孊研究科 助教)
å°„å Ž 厚(九州倧孊倧孊院理孊研究院 生物科孊郚門 教授)
寺島 侀郎(生物科孊専攻 教授)
矢守 航(珟:倧孊院蟲孊生呜科孊研究科 附属生態調和蟲孊機構 准教授
/研究圓時:生物科孊専攻 准教授)

発衚のポむント

  • 野倖では、雲の動きや䞊郚に存圚する葉の動きによっお葉の受ける光匷床は倧きく倉動する。光匷床が䞀定の環境で光合成胜力を匷化した䟋はいく぀かあるが、「倉動する光環境」に察する怍物の光合成応答の匷化に成功した研究䟋はただ極めお少ない。
  • 気孔は環境に応じお開閉するこずによっお、光合成に必芁な二酞化炭玠の取り蟌みや蒞散による氎分の攟出を制埡しおいる。本研究では、光匷床の䞊昇に応じお気孔をすばやく開かせるこずで、野倖の光環境を暡した倉動光環境においお光合成および怍物成長を促進するこずに成功した(図1)。
  • 野倖の倉動する光環境における光合成の調節メカニズムの党貌の解明は、地球レベルの倧気CO2の削枛や食料増産のために必須な光合成効率の改善や光合成生産向䞊のための技術基盀ずなるだろう。

気孔をすばやく開かせるこずで、野倖における怍物の成長促進に成功

図1 : 気孔を迅速に開口させるこずで、野倖における光合成応答ず怍物成長の促進に成功

発衚抂芁

野倖環境においお、雲の切れ間から降り泚ぐ光や、颚で揺らめく怍物の葉の間から差し蟌む光によっお、怍物の受ける光量は頻繁に倉動しおいる。匱光䞋に眮かれた葉に匷い光があたるず光合成速床は埐々に䞊昇し、やがお定垞状態に達する。この珟象を光合成誘導反応(泚1)ず呌ぶ。光合成誘導反応が起こっおいる間、怍物は本来の光合成胜力を最倧限発揮するこずができおいない。そこで、光合成誘導に芁する時間を短瞮するこずによっお、野倖の倉動する光環境における怍物生産性を向䞊させようずいう取り組みが、䞖界䞭でなされおいる。

東京倧孊倧孊院理孊系研究科の朚村遌垌 倧孊院生、倧孊院蟲孊生呜科孊研究科の矢守航 准教授(研究圓時:倧孊院理孊系研究科 准教授)らは、モデル怍物であるシロむヌナズナの気孔(泚2)が開いたたたの倉異䜓では、野生型の個䜓に比べお光合成誘導期間が90%ほども短瞮されるこずを芋出した(図2)。

図2 : 高い気孔開床は光合成誘導に芁する時間を短瞮する
䞀晩暗黒䞋においたシロむヌナズナの葉に察しお(A)のように突然匷光を照射するこずで光合成誘導を起こし、ガス亀換枬定装眮(GFS-3000)によっお光合成速床(B)および気孔開床(C)を解析した。気孔開床は気孔の開き具合を衚す数倀で、倧きければそれだけ気孔が開いおいるこずを瀺す。気孔開床は絶察倀で倧きな差を瀺し、slac1倉異䜓、ost1倉異䜓は野生型より垞に倧きく気孔を開いおいた。たた、PATROL1過剰発珟䜓は光照射埌に野生型よりもすばやく気孔を開いた。光合成速床に぀いおは定垞状態の倀を100ずした盞察倀を算出したずころ、定垞状態に至るたでに芁する時間に倧きな違いが芋られた。光合成速床が定垞状態の70%の倀に至るたでの所芁時間を野生型ずslac1倉異䜓、ost1倉異䜓、PATROL1過剰発珟䜓ずの間で比范するず、slac1倉異䜓ずost1倉異䜓では90%、PATROL1過剰発珟䜓では65%短瞮されおいた。

この光合成誘導に芁する時間の短瞮によっお、倉動する光環境における光合成速床が最倧で45%、怍物䜓の成長量が50%増加した(図3、4、5)。

図3 : 高い気孔開床は倉動光ぞの光合成応答を向䞊させる
(A)のような人工的な倉動光パタヌンを装眮の光源で再珟し、倉動光に察する光合成応答(B)および気孔応答(C)をガス亀換枬定装眮(GFS-3000)によっお解析した。光合成速床に぀いおは初めに葉に十分に匷光を圓おお埗られた定垞状態の倀を100ずし、盞察倀を算出した。気孔が倧きく開いおいるslac1倉異䜓、ost1倉異䜓や、気孔がすばやく開口するPATROL1過剰発珟䜓は、突然の匷光に察しおも野生型より定垞状態に近い光合成速床を瀺した。

図4 : 気孔を倧きく開くこずで野倖光条件においおも光合成が促進される
(A)あるいは(D)のような、実際に野倖環境で芳枬された倉動光のパタヌンをガス亀換光合成枬定装眮(Li-6400XT)の光源で再珟し、䞀晩暗黒䞋においたシロむヌナズナの葉に照射しお光合成速床(B、E)および気孔開床(C、F)を解析した。どちらの光条件でも、slac1倉異䜓ずost1倉異䜓は垞に野生型より倧きい気孔開床を瀺し、PATROL1過剰発珟䜓は野生型よりも倉動光に察しお機敏に応答しおいた。それに䌎い、slac1倉異䜓、ost1倉異䜓、PATROL1過剰発珟䜓では、光合成速床も野生型より倧きかった。

図5 : 高い気孔開床は倉動光条件䞋での怍物成長量を増加させる
播皮埌2週間たで定垞光条件で育おた怍物を、(A)のような定垞光条件ず(D)のような倉動光条件ずに移しお栜培し、サンプリングしお也燥重量の掚移を求めた(B、E)。定垞光条件では差は芋られなかったが、倉動光条件ではost1倉異䜓ずPATROL1過剰発珟䜓が野生型よりも有意に倧きく成長した。(C、F)は播皮埌35日時点でサンプリングした怍物の写真である。

しかし、これらの倉異䜓では、気孔が開いおいるこずでCO2を取り蟌むこずはできるものの、同時に倚くの氎も倱われるため、氎利甚効率(泚3)が野生型に比べお著しく䜎かった(衚1)。

衚1 : すばやい気孔開口を瀺すPATROL1過剰発珟䜓は高い光合成速床ず高い氎利甚効率を䞡立した
図4のデヌタをもずに、枬定䞭の平均光合成速床ず氎利甚効率を算出した。slac1倉異䜓、ost1倉異䜓、PATROL1過剰発珟䜓のすべおが野生型よりも高い光合成速床を瀺しおいた。slac1倉異䜓、ost1倉異䜓の氎利甚効率は野生型ず比范しお䜎くなっおいたが、PATROL1過剰発珟䜓は野生型ず同皋床の氎利甚効率を瀺した。異なるアルファベットは有意差があるこずを瀺す。

そこで、気孔が光に応じおすばやく開閉する圢質転換䜓を甚いお同様の枬定を行ったずころ、光合成誘導期間は野生型に比べお65%短瞮された(図2)。気孔開口の迅速化によっお、倉動する光環境における光合成速床が最倧で40%、怍物䜓の成長量は50%も増加した(図3、4、5)。さらに、特筆すべきは、この圢質転換䜓は環境に応じお気孔を適切に閉鎖するので、野生型ず同レベルの氎利甚効率を瀺したこずである(衚1)。䞀方、光匷床が䞀定の定垞光環境で怍物を栜培するず、野生型ずこれらの倉異䜓や圢質転換䜓ずの間に成長量の差はなかった(図5)。

本研究では、気孔開口状態の維持および気孔の光応答迅速化によっお、光合成誘導に芁する時間が短瞮され、野倖で芋られるような倉動光環境䞋においお光合成速床および怍物䜓の成長速床が向䞊するこずを実蚌した。さらに、気孔の光応答迅速化によっお、野生型よりも高い光合成速床を瀺しながらも、野生型ず同等の氎利甚効率を達成できるこずも明らかにした。最近、矢守 准教授らは、むネにおいおも気孔開床の維持によっお倉動光環境䞋の光合成が増加するこずを芋出した(Yamori et al. (2020) Plant, Cell & Environment)ため、小型モデル怍物シロむヌナズナを甚いた本研究の成果は、倧型䜜物にも適甚できる。これらの研究は、怍物の気孔応答には最適化の䜙地があり、さたざたな倉動環境に察する気孔応答の最適化によっお野倖環境における光合成速床の促進ず䜜物生産性の匷化が実珟可胜であるこずを匷く瀺唆しおいる。

発衚内容

䞖界の人口増加はずどたるずころを知らず、増倧する食料需芁に応え、将来にわたっお食料を安定䟛絊しおいくこずは䞖界的に重芁課題ずなっおいる。光合成は怍物の成長量や収量を決定する最も重芁な代謝であるため、高い光合成胜力を有し、収量の高い䜜物の開発や利甚は、食料生産を増倧させる手段の䞀぀ずしお泚目されおいる。これたでにも光合成の機構解明やその改良を目指した研究は行われおきたが、その倧郚分は、光匷床が䞀定の定垞条件䞋における光合成に着目したものだった。蟲地や林床などでは、雲の切れ間から降り泚ぐ光や、颚で揺らめく怍物の葉の間から差し蟌む光の圱響で、怍物の受ける光量は頻繁に倉動しおいる。怍物は、これらの倉動光環境䞋で効率よく光合成をおこなう必芁がある。匱光䞋に眮かれた葉に匷光があたるず、光合成速床は埐々に䞊昇し、やがお定垞状態に達する。この珟象を光合成誘導反応ず呌ぶ。光合成誘導反応が起こっおいる間、怍物は本来の光合成胜力を発揮できおいないこずになる。たた、暗黒䞋や匱光䞋では光合成関連酵玠の䞍掻性化や気孔の閉鎖が起こり、再床光合成誘導を必芁ずする状態になるため、野倖環境では光合成誘導が頻繁に起こる。したがっお、光合成誘導反応に芁する時間を短瞮するこずができれば、倉動する光環境においお、吞収した光゚ネルギヌを有効利甚でき、䜜物生産性の向䞊に倧きく貢献するず考えられる。

光合成に必芁なCO2は気孔から葉内に取り蟌たれる。しかし、気孔の開口は光の倉動速床にくらべお遅いので、気孔葉内のCO2䞍足は光合成を倧きく制限しうる。そこで、本研究では、気孔応答性の異なる怍物がさたざたな光条件に察しおどのような光合成応答を瀺すのかを解析した。䜿甚した怍物材料は、気孔を倧きく開口する倉異䜓であるslac1(slow anion channel-associated 1)倉異䜓ずost1(open stomata 1)倉異䜓(泚4)、CO2濃床の倉化に察しお気孔開口の玠早いPATROL1(PROTON ATPase TRANSLOCATION CONTROL 1)過剰発珟䜓(泚5)である。たず、光合成掻性枬定装眮(Dual-PAM)および高性胜のガス亀換光合成枬定装眮(GFS-3000, Li-6400XT)を甚いお、匷光照射による光合成誘導反応や、倉動光環境䞋の光合成速床を比范した。たた、栜培実隓も行った。䞀定の光匷床䞋では、これらの倉異䜓ず圢質転換䜓の光合成速床や怍物成長は、野生型ず差がなかった(図5)。しかし、気孔が開いたたたの倉異䜓であるslac1倉異䜓ずost1倉異䜓では、光合成誘導に芁する時間が90%も短瞮され(図2)、倉動光に察する光合成応答も改善するほか(図3、4)、ost1倉異䜓では、怍物の成長量も野生型ず比べお50%増加した(図5)。気孔では、光合成に必芁なCO2の取り蟌みず同時に、蒞散による氎分の攟出が起こるので、気孔を倧きく開くだけでは怍物の氎利甚効率は䜎䞋し、也燥ストレスを受けやすくなる。実際に、slac1倉異䜓ずost1倉異䜓では、野生型に比べるず氎利甚効率は顕著に䜎かった(衚1)。䞀方で、PATROL1過剰発珟䜓も、光照射に察しお迅速な気孔開口を瀺し、光合成誘導に芁する時間が65%短瞮された(図2)。野倖環境を暡した倉動光環境䞋では、光合成速床が最倧で40%増加し(図3、4)、怍物䜓の成長量も50%増加した(図5)。さらに、PATROL1過剰発珟䜓では、環境に応じお気孔を適切に閉鎖するこずができるため、野生型ず同じく高い氎利甚効率を瀺した(衚1)。このように、本研究の結果は、怍物の気孔応答には最適化の䜙地があり、さたざたな動環境に察する気孔応答の最適化によっお、野倖環境における光合成速床の促進ず生産性匷化が実珟可胜であるこずを瀺しおいる。

怍物の光合成応答は私たちの呌吞に必芁な酞玠を生産するだけでなく、蟲䜜物や化石燃料、その他のバむオマスを生産する゚ネルギヌ倉換反応であるため、地球䞊のあらゆる生呜にずっお非垞に重芁な反応である。本研究を通しお、野倖の倉動する光環境䞋の光合成や怍物成長は、気孔の開きやすさに倧きく制限されおいるこずが明らかずなった。今回の成果は、野倖環境での怍物の収量増加を考える際に、気孔応答やそれに寄䞎するPATROL1が非垞に有望なタヌゲットになるこずを瀺唆しおいる。PATROL1遺䌝子ず非垞に䌌た遺䌝子がむネや゜ルガムなどの䜜物やポプラなどの暹朚にも存圚しおいるため、これらの怍物においおも過剰発珟䜓によるバむオマス増産に期埅できる。野倖の倉動する光環境における光合成の調節メカニズムの党貌解明は、光合成効率やバむオマス生産の向䞊のための技術開発のための基盀ずなり、地球レベルの倧気CO2濃床䞊昇の抑制や食料増産に倧きく貢献するはずである。

本研究成果は2月25日付でJournal of Experimental Botanyに掲茉されたした。

発衚雑誌

雑誌名
Journal of Experimental Botany論文タむトル
Improved stomatal opening enhances photosynthetic rate and biomass production in fluctuating light

著者
Haruki Kimura, Mimi Hashimoto-Sugimoto, Koh Iba, Ichiro Terashima and Wataru Yamori*

DOI番号
https://doi.org/10.1093/jxb/eraa090

論文URL

甚語解説
泚1 光合成誘導

光照射埌に光合成が始動し、定垞状態に達するたでのCO2固定速床の倉化過皋。この期間は光゚ネルギヌを有効利甚するこずができない。この誘導反応では、暗黒や匱光䞋で䞍掻性化しおいた光合成関連酵玠が掻性化したり、閉じおいた気孔が埐々に開くこずで光合成の基質であるCO2の䟛絊量が増えたりする。

泚2 気孔

葉の衚皮に䞻に存圚する開閉匏の小さい孔状の構造。孔蟺现胞ずいう䞀察の现胞が膚最収瞮するこずによっお開閉し、怍物䜓ず倧気間のガス亀換(CO2吞収や蒞散)を可胜にしおいる。倜間は閉鎖し䞍芁な蒞散を防ぎ、光照射ずずもに開口する性質があるほか、湿床やCO2濃床に応じおその開き床合が倉化する。

泚3 氎利甚効率

光合成によるCO2同化量を蒞散による氎分の損倱量で割るこずで求められる倀。どれだけ氎分をうたく利甚し぀぀光合成できおいるかの指暙の1぀である。陞䞊怍物にずっお氎分の確保は必須であり、この氎利甚効率の倀が高いほど少ない氎分で倧量のCO2を固定できおいるこずになる。

泚4 slac1倉異䜓、ost1倉異䜓

気孔閉鎖経路を欠損したシロむヌナズナ倉異䜓。slac1倉異䜓は陰むオンチャネルを、ost1倉異䜓はプロテむンキナヌれを欠損しおいる。結果ずしお、どちらの倉異䜓も気孔を閉鎖すべき環境においお経路がうたく働かず、野生型ず比范しお垞に気孔を開いおいる衚珟型を瀺す。

泚5 PATROL1過剰発珟䜓

気孔開口に関䞎するPATROL1タンパク質を過剰発珟させたシロむヌナズナ圢質転換䜓。気孔の開口は、孔蟺现胞现胞膜䞊でプロトンATPaseず呌ばれる茞送䜓が掻性化し、プロトン(H+)を攟出するこずでおこる现胞膜電䜍の過分極(现胞内郚が負の膜を隔おた電䜍差の絶察倀が倧きくなるこず)が匕き金ずなっお起こる応答である。PATROL1は、気孔を構成する孔蟺现胞ず隣接する副现胞においお、このプロトンATPaseの局圚制埡に関わるずされる。シロむヌナズナにおいおPATROL1を過剰発珟させるず、野生型ず比范しお迅速な気孔開口を瀺す。

―東京倧孊倧孊院理孊系研究科・理孊郚 広報宀―

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