2021-03-03 京都大学
益田玲爾 フィールド科学教育研究センター教授、笠井亮秀 北海道大学教授、山中裕樹 龍谷大学准教授、亀山哲 国立環境研究所主任研究員、東信行 弘前大学教授、木村伸吾 東京大学教授、黒川優子 東北生活文化大学准教授らの研究グループは、全国265河川365地点で環境DNA調査を行い、これまで謎の多かったニホンウナギ(以下、ウナギ)の分布を調べた結果、ウナギは関東以西の本州太平洋側や瀬戸内海、そして九州西岸の河川で多く生息していることがわかりました。一方日本海側では、能登半島以西には生息していますが、北陸東北地方にはほとんど生息していないことが明らかとなりました。そして北海道の河川にも、ウナギはほとんどいませんでした。
また、南方から海流によって日本まで運ばれてくるウナギの仔魚(シラスウナギ)の輸送状況をシミュレーションによって調べたところ、仔魚が到達する場所と環境DNA調査でウナギが生息していると推定された場所がよく一致しました。このことから、海洋でのシラスウナギの輸送状況が日本国内の河川におけるウナギの分布を決める主要因になっていると考えられます。また、ウナギの環境DNA濃度が高かった河川は全窒素濃度も高い傾向にありました。これは高栄養環境にある河川ほどウナギの生残や成長が良いことを示唆しています。本研究結果は、日本人にとって重要な水産物でありながら絶滅危惧種にも指定されているウナギの保護と資源管理に重要な知見を与えるものといえます。
本研究成果は、 2021年2月25日に、国際学術誌「Frontiers in Ecology and Evolution」のオンライン版に掲載されました。
図:河川に生息するニホンウナギ
研究者情報
研究者名:益田玲爾