ラジカルを活用した新たなケージド化法の開発~アセチルコリン濃度の時空間制御に成功~

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2023-05-09 京都大学

大宮寛久 化学研究所教授、中村梨香子 薬学研究科博士後期課程学生、新井敏 金沢大学准教授、隅田有人 同助教、山崎健 同博士後期課程学生らの共同研究グループは、これまで実現困難であったアセチルコリンをケージド化する手法を開発し、生細胞条件およびハエの脳を用いたex vivo条件で自在にアセチルコリン濃度を制御することに成功しました。

ケージド化合物は、生理活性化合物に光で除去可能なユニット(Photoactivatable Protecting Group = PPG)の連結により一時的に不活化した分子で、まさにカゴ入れられたような状態です。光を照射することで、生理活性化合物が作用する時空間を制御できるため、この技術は細胞機能発現の機構解明に幅広く利用されています。一方で、ケージド化合物を作る際に汎用されるPPGは、その連結に水酸基(OH)やカルボキシル基(CO2H)あるいはアミノ基(NH)といった官能基が必要となります。つまり分子構造にこれらを持たない生理活性化合物はケージド化できないため、構造に制限がありました。

本研究では、可視光により炭素–ホウ素結合が切断されて炭素ラジカルが生じる有機ホウ素化合物を活用することで、分子骨格上の炭素を起点としたケージド化法を開発しました。炭素は全ての有機化合物に含まれるため、従来の構造制限を取り払うと期待されます。

本研究成果は、2023年5月4日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「これまで有機合成反応の開発に用いてきた有機ホウ素化合物を、ケージド化合物としてケミカルバイオロジー分野へと応用しました。この有機ホウ素化合物の魅力は、分子骨格上に置換基を導入することで新たな光反応性を示すことです。今後、分子骨格をデザインすることで、さらなる機能性の向上を目指していきたいと思います。」(中村梨香子)

詳しい研究内容について

ラジカルを活用した新たなケージド化法の開発―アセチルコリン濃度の時空間制御に成功―

研究者情報

研究者名:大宮 寛久

書誌情報

【DOI】

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【書誌情報】

Rikako Nakamura, Takeru Yamazaki, Yui Kondo, Miho Tsukada, Yusuke Miyamoto, Nozomi Arakawa, Yuto Sumida, Taketoshi Kiya, Satoshi Arai, Hirohisa Ohmiya (2023). Radical Caging Strategy for Cholinergic Optopharmacology. Journal of the American Chemical Society.

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