視床下核の活動は、ハイパー直接路と関接路を経由して大脳皮質からの調節を受ける

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2021-01-07 生理学研究所,日本医療研究開発機構

研究成果のポイント

大脳皮質から大脳基底核*1の一部である視床下核への情報伝達様式を、ニホンザルを用いて明らかにしました。

概要

ニホンザルを用いて、視床下核の神経活動を記録しながら神経伝達を遮断する薬剤を大脳基底核に微量注入することにより、大脳皮質からの情報が、大脳皮質からの直接連絡であるハイパー直接路と、大脳基底核を構成する別の核である被殻と淡蒼球外節を経由する間接路によって、時間差をもって視床下核に至り、その活動を調節していることを明らかにしました。

研究の背景

大脳の深部にある大脳基底核は、パーキンソン病*2などの運動異常症に関わっています。大脳基底核の中の一つに視床下核があり、その変調により運動障害が現れることや、逆にパーキンソン病の際に視床下核に電極を埋め込み24時間電気刺激を続けると、パーキンソン病が治療できること(脳深部刺激療法、DBS*3)が知られています。大脳基底核は大脳皮質から神経情報を受け取り、情報処理を行うことから、大脳皮質からの情報が、どのように視床下核に至るのかを調べることは、その機能を調べるにあたって重要な手がかりとなります。

研究の手法と成果

ニホンザルを用いて、大脳皮質を電気刺激し、視床下核から単一ニューロン活動を記録すると、早い興奮と、それに続く遅い興奮が記録されます。その成因を調べるため、私たちはニホンザルを用いて、視床下核の神経活動を記録しながら神経伝達を遮断する薬剤を、視床下核の局所や大脳基底核を構成する他の核(被殻、淡蒼球外節)に微量注入することにより調べました(図1)。


図1.実験のセットアップ図GPe、淡蒼球外節;GPi、淡蒼球内節;MIp、大脳皮質一次運動野上肢近位領域;MId、大脳皮質一次運動野上肢遠位領域;Put、被殻;SMA、補足運動野上肢領域;STN、視床下核。


その結果、大脳皮質から視床下核への神経情報伝達について

  1. 大脳皮質からの直接連絡であるハイパー直接路による興奮性入力によって、まず興奮が引き起こされ、
  2. 次に、大脳皮質から被殻と淡蒼球外節を順に経由する間接路によって、淡蒼球外節が抑制され、視床下核が淡蒼球外節による抑制から一時的に脱することによって、2つ目の興奮が引き起こされる、

ことがわかりました(図2)。


図2.大脳皮質からの神経情報は、ハイパー直接路と間接路(途中に被殻、淡蒼球外節を経由する)を介して、視床下核に到ることを示す模式図。それぞれの部位での反応と伝達経路を示しています。


すなわち、大脳皮質からの情報は、2つの異なる経路を経由して、時間差をもって視床下核に到り、その活動を調節していることが明らかになりました。

研究成果の意義、今後の展開

視床下核が壊れるとヘミバリスムという手足が勝手に動いてしまう神経症状を示します。またパーキンソン病の際には、視床下核の神経活動が上昇したり、逆に視床下核に連続電気刺激を加えると(脳深部刺激療法)、パーキンソン病が治療できるなど、視床下核は疾患に大きく関わっています。このような視床下核にどのような入力が入っているかを調べた研究結果は、大脳基底核の役割やパーキンソン病をはじめとする病気の病態生理、さらには脳深部刺激療法などの治療メカニズムを理解するのに役立ち、治療法の改良や新たな治療法の開発に繋がります。また、大脳基底核における入力様式を明らかにすることは、種間比較の基礎情報ともなります。

掲載論文
論文タイトル
Cortical Control of Subthalamic Neuronal Activity through the Hyperdirect and Indirect Pathways in Monkeys
著者名
Zlata Polyakova, Satomi Chiken, Nobuhiko Hatanaka, and Atsushi Nambu
雑誌名
The Journal of Neuroscience
Issue: 40(39)
Pages: 7451-7463
日時
September 23, 2020
URL(abstract)
https://www.jneurosci.org/content/40/39/7451
DOI
10.1523/JNEUROSCI.0772-20.2020
本研究の支援

AMED「戦略的国際脳科学研究推進プログラム」JP19dm0307005
文部科学省新学術領域研究「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」15H05873
文部科学省科学研究費 16K07014、26250009、19KK0193
JST CREST JPMJCR1853
文部科学省奨学金

用語解説
*1 大脳基底核
大脳の深部に存在する神経細胞の集まり。手足の運動などをコントロールしており、その不調によりパーキンソン病やジストニアなどを来す。尾状核、被殻、視床下核、淡蒼球外節・内節、黒質緻密部・網様部などから構成されている。
*2 パーキンソン病
手足が動かしにくい、振るえる、筋肉が強張るなどの症状を示す神経難病。大脳基底核の黒質緻密部にあるドーパミン神経細胞が減少することによっておこる。有病率は1000人あたり1人、60歳以上では100人に1人と多い疾患である。
*3 脳深部刺激療法(DBS)
パーキンソン病の治療は、減少したドーパミンを外から飲み薬などで補ってやるのが第一選択であるが、進行するとコントロールが難しくなる。その際、脳深部に刺激電極を手術によって埋め込み、24時間刺激を与える治療法(脳深部刺激療法、DBS)が有効である。視床下核は、脳深部刺激療のターゲットのひとつである。
お問い合わせ先

研究について
自然科学研究機構 生理学研究所 生体システム研究部門
教授 南部篤(ナンブアツシ)

AMED事業について
日本医療研究開発機構 疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課
戦略的国際脳科学研究推進プログラム

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