2021-02-05 東京大学
東京大学大学院薬学系研究科博士課程の鹿野悠大学院生(研究当時)、佐々木拓哉特任准教授、池谷裕二教授の研究グループは、脳の海馬と線条体の神経細胞が、分単位の時間の流れに対応して活動することを発見しました。
動物は、将来起こる出来事を予測し、時間経過に応じて適切な行動を選択していく必要があります。このような時間の情報処理の脳内メカニズムに関する研究は、従来から行われてきましたが、その多くは数秒単位(5秒から20秒程度)の短い時間を対象としたものでした。一方で、生存に重要な数分間におよぶ時間経過の認知に、脳のどのような神経活動が重要であるかという点はほとんど知られていませんでした。
本研究グループは、時間の情報を処理する脳領域として、海馬と線条体に着目しました。5分おきにエサの報酬を獲得するようにラットを訓練させたところ、神経細胞は、分単位の時間経過と関連して活動を変化させることを発見しました。
本研究により新たに解明された数分間に及ぶ脳活動は、動物が時間経過を生体内に刻むための普遍的な機構と考えられます。
論文情報
Yu Shikano, Yuji Ikegaya, Takuya Sasaki, “Minute-encoding neurons in hippocampal-striatal circuits,” Current Biology 31: 2021年2月5日, doi:10.1016/j.cub.2021.01.032..